ホーム » 投稿 » 日本映画 » 劇場公開作品 » 「心も体も溺れました」谷崎潤一郎の名作が現代に蘇る。映画『卍』井土紀州監督、 新藤まなみ、小原徳子、インタビュー » Page 3

「未体験の世界に行った」
女性同士のベッドシーンについて

c412 小原徳子 写真:宮城夏子
小原徳子 写真宮城夏子

―――園子と光子が初めて唇を交わす海辺のシーン、とても美しいと思いました。現場の雰囲気はいかがでしたでしょうか?

新藤「そのシーンはスタッフの皆さんもすごく気を遣ってくださって、より一層集中して芝居に臨むことができました。たしか撮影中盤あたりで撮ったと思うのですが、小原さんとの関係も深まり、役への理解を深めていった中での撮影だったので、本当に良い状態で臨めましたね」

井土「海岸のシーンを撮った日は、程よい曇天だったんです。ピーカンだと影が出ちゃうし、明るすぎて情感が出なくなっちゃう。程よい曇天で、柔らかい光が空間全体に行き届いている中、お二人が自然に光子と園子を生きているなぁ、と思っていました」

―――その後、ホテルを訪れた2人は初めて結ばれるのですが、ソファに倒れてからベッド行って一糸まとわぬ姿になるまで、省略なしで描写されていますね。2人の動きは井土監督が細かく決めていったのでしょうか?

井土「動線と芝居の流れはロケハンの時点で大体決めていました。ただ、現場にはプロデューサーもいらしてまして、衣服を脱ぐまでのタイミングを『もうちょっと我慢してほしい』との注文があったりしたので、細かい調整は現場でしていきました」

小原「このシーンは特に丁寧に撮っていただいたという印象が残っています。時間もしっかりかけてくださいましたし、映画に携わるチーム全員の思いが詰め込まれている場面だと思います。私も園子として、『卍』のすべてを背負うつもりで。指先一本一本どこに這わせるかを考えながら、このシーンにすべてを注ぐ気持ちで撮影に臨みました」

新藤「たしか、3~5時間くらいかけて撮ったシーンだと思います。長い時間をかけたので、集中力が切れそうなものですが、全く切れませんでした。あとは、何より、園子さんの肌がスベスベしていて、本当にエロいんです。息遣いも、指も、触れる肌も」

(一同笑)

新藤「男性にはない、繊細さと言いますか、すごく綺麗な心地がして、心も体も溺れました。その一言に尽きますね。男性に触られるのと女性に触られるのって、まったく違う感覚があって、未体験の世界に行ったなと。『没頭していたら終わっていた』という感じでしたね」

小原「ベッドシーンだけじゃなくて、全部のシーンがそうなんですけど、『もっと、もっと光子が欲しい』っていう想いがより一層このシーンには出ている気がしていて。多分、映画をご覧になる方もそうした感覚に陥るんじゃないかなと思いますね」

1 2 3 4 5 6
error: Content is protected !!