「これまでとは違う感覚の作品に仕上がっている」
巨匠・岩井俊二の新境地
―――ストーリー自体もとても音楽的・楽曲的だと感じました。第一楽章、第二楽章といったような。
「ありがとうございます」
―――その中で、あれほど複雑な人間関係と時系列が交差しながらも、これだけ分かりやすい作品はないとも思いました。
「うん、そこは何て言うか、長年培ってきた経験から自然と出てきたものですかね。このシチュエーションがこうなれば、次のシチュエーションはああしようというね。ずっと、そういうことをやっているので」
―――断片的に思い付いたピースを、つなぎ合わせたものではないと。
「基本ベースはもちろんあるのですが、ストーリーの展開を作る際に、ああでもない、こうでもないという風にはあまり考えていないと思います」
―――とても深いお話です。
「ただ、自然な流れで作っているとはいえ、各キャラクターのエピソードをどう捕まえて、どういう風に入れ、どう説明し、どう物語っていくかということは、工夫しながら考えていますね」
―――『キリエのうた』の全てのキャラクターに魅力があることに、非常に納得がいきました。
「今作は音楽が軸にあるので、節々でアイナさんの楽曲が流れるわけで、構成上のアクセントは付けていきやすくはありましたね。これまでとは違う感覚の作品には仕上がっていると思います」
―――音楽は、今回も小林武史さんが手がけていますし、まさに音楽映画ですね。個人的には、ある場面でキリエがアカペラで歌うシーンに説得力を感じました。
「ああ、あのシーンは、まさにアイナさんの力です」