「僕が送ってみたかった小学生時代の現れかもしれない」
デビュー作を振り返り…。
―――ところで、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(1995)では、小学生役のヒロインとして出演していた奥菜恵さんが、今作ではイッコの母・広澤楠美役で出演されています。演出されていて感慨深かったのではないでしょうか?
「それが意外とあんまり懐かしさみたいなものはなかったんです。なんか不思議なもので。現場では、あの頃から時が止まっているような感じで」
―――ええ! そうなんですね。
「撮影に入る際は『じゃあメグ(奥菜恵)やるよ~』みたいな感じでしたよ、はい。なんか『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の翌日の撮影ぐらいな感じで(笑)」
―――はあ~(溜息)。もう、そういう感覚なんすね。
「僕だけかもしれませんが、監督と役者さんの関係って、撮影が終わったところで止まっていたりするんですよ。だから、例えば今作でメグと再会した際も、昨日撮った『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の別のシーンがスタートしているだけといった感覚で。
懐かしいとか、そこを思い出す時間はそんなに現場であるわけではないので、もちろん、すごく楽しくはありますよ。また一緒にやれる喜びや、撮り終わってみれば、懐かしさはないと言いつつも、思いがけない郷愁もやはり感じます」
―――僕はあの作品の最初のテレビ放送をたまたま18歳のころに観て、何とも言えないノスタルジーを感じました。
「ああ、ありがとうございます(笑)。嬉しいですね。あの物語は、僕が送ってみたかった小学生時代の現われなのかもしれません。『キリエのうた』も世代を問わず、観る方々の想いのままに受け取ってほしいです」
(取材・文:ZAKKY)
【関連記事】
「春画が否定された頃、映画の歴史が始まった」映画『春画先生』塩田明彦監督、単独インタビュー。映画づくりに向ける思いを語る
「強さも弱さも持っているのが人間」映画『Threads of Blue』主演・佐藤玲インタビュー。本作への想い語る
「まずはスタッフや共演者に自分の芝居を面白いと思ってもらう」映画『僕の名前はルシアン』主演・栁俊太郎、独占インタビュー