「影響を受けているレベルに大好きです」
名作映画を意識した内田監督の描写とは
―――古いものが好きな影山さんとのデートでは、ミニシアターに『サンセット大通り』を見に行かれていました。『サンセット大通り』(1950)は、階段のシーンが効果的に使われていますが、今作は、重要なシーンで階段が多く使われていると感じました。こちらは明確に意識されましたか?
「撮影時は考えていませんでしたが、していたことにしておきましょう(笑)」
―――ちなみに内田監督は、元々『サンセット大通り』がお好きなのでしょうか?
「影響を受けているレベルに大好きですね!」
―――大衆に向けて自分を魅せるということや、煌びやかな世界が原因となって苦しんでしまう描写など、『ミッドナイトスワン』と『サンセット大通り』は似ていると思いました。『ミッドナイトスワン』には反映されていたのでしょうか。
「良い人生を送ってきた人間が堕ちていく様、“栄光と没落”というモチーフの作品がすごく好きなので、『ミッドナイトスワン』に限らず自分が描く作品に共通しているかもしれません。『サンセット大通り』は、主人公の狂いながらも最後、華やかな世界を無双するのが、今作に合っているなと思って、ミニシアターのデートシーンに採用しました。
ちょっと脱線ですけど、昔『全裸監督』(2019)をやった時に、仰ってた『サンセット大通り』の階段を意識したシーンがあります。よかったら観てみてください」
―――現在公開されている『サイレントラブ』も拝見させていただきましたが、内田監督の作品では、キャラクターが語らずとも心情が伝わってくるような淡い光が印象的に感じます。内田監督のこの光の描写はどのようにして作られているのでしょうか。
「特に自然の光ですが、光の描写はとても重要だと考えていて、本来であれば、ボーンと窓を映して外の風景も見せたいと思っているんですよ。でも光は狙わないと撮れないんですよ。
だから部屋の中だと光を人工的に作るという方向性になるので、自分の映画だと、窓がない部屋でも窓があるようにすることが多いです。これは技術的な話になりますが、日本の映画は光量が弱くて光が白く飛んでしまうんです。それがすごく嫌で、それをなんとかするためにカーテンで隙間を小さくしたり、今作では板を貼ったりしています」
―――一般的なスリラー映画では、コントラストを強調すると思うのですが、本作ではそうではなく、淡い光が多用されています。今作でも淡い光を使用した意図をお聞きしたいです。
「スポットライトみたいな不自然な光が苦手なんです。窓があって、カーテンがあって…というリアルに入る光の方がホラーやスリラーには向いていると思って、あえて普段通りにしました」
―――細かい描写まで監督のこだわりやプライドが伝わってきます。内田監督の作品はごちゃっとした部屋のインテリアが生活感を感じられて個人的に好きなのですが、こういった小道具やインテリアはどのように考えて作られているのでしょうか。
「ドキュメンタリーではないので現実をそのまま映し出す必要はないんです。基本的にデザイン、技術、音楽などの文化は、退化の歴史だと考えているので、近代的なものは排除したいと思っています。
基本的に部屋も古い方がいいですね。会議室だったら、現実的には絶対ないんですけど洋館風の会議室なんかも良いですね! 自分の作品では、退化していく中で良いものをピックアップして、新しいものを作りたいと思っています」
―――最後になりますが、この映画を見る方々にメッセージをお願いします。
「単純に、ドキドキするために娯楽をフォーカスして作った映画なので、おそらくドキドキできると思うので楽しんでみてください」
(取材・文:タナカシカ)
【作品情報】
タイトル:『マッチング』
出演:土屋太鳳、佐久間大介、金子ノブアキ、真飛聖、後藤剛範、片山萌美、片岡礼子、杉本哲太、斉藤由貴
監督・脚本:内田英治
原作:内田英治『マッチング』(角川ホラー文庫刊)
音楽:小林洋平 共同脚本:宍戸英紀
主題歌:Aimer「800」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
配給:KADOKAWA
コピーライト:©2024『マッチング』製作委員会
製作:『マッチング』製作委員会
制作・配給:KADOKAWA
公開:2月23日(金・祝)
レーティング:G
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