映画オリジナル要素④
流川と宮城が全国大会前に2人きりで話すシーンがある
これは、映画オリジナルシーンの中でも、個人的に最も感銘を受けたシーンである。リョータによる「そういや、お前と話すの初めてだな」。この一言に多くの『SLAM DUNK』ファンはグッと来たのではないだろうか。
インターハイ初戦である豊玉高校戦で、流川が片目を負傷した際のこと。リョータに対し「先輩、パス、ワンバウンドしてもらえるとありがたいっす」と発言。また、映画でも描かれた山王工業戦では「行くぞ!流川!」と、ツートップなコンビネーションで攻めるシーンも見受けられる。
お互いのポジション的に普通のやりとりかもしれないが、ぶっきらぼうで無口な流川が、リョータにだけは心を開いているなと、原作を読む度に筆者は思っていた。とはいえ、原作では宮城と流川の距離感が山王戦で急に縮まり、やや飛躍を感じないこともなかった。しかし、映画版で2人きりの会話が描かれることによって、山王戦で描かれた阿吽の呼吸がよりエモーショナルに見えてくる。
花道に対しても優しく、時には兄弟のように接するリョータ。身長こそチームで一番低いが、後輩の面倒見がいい、やさしいお兄ちゃん的な存在。亡くなった、かっこいい兄・ソータのように自分もなりたい…。リョータの密かな想いが見え隠れするところも心憎い演出である。