改変不満点④
花道が2万本シュートを達成する合宿シーンがない
原作ファンの思いとしては、このシーンも入れてほしかった。花道が主役ではないとは言え、最後のシュートを決めるのは、原作通り花道なわけなのだから、このくだりがないと、クライマックスが活きない。
また、その原作における「左手はそえるだけ」という名セリフも口パク描写となっており、その代わりなのか、流川とハイタッチする際に花道の「シャアッ!!」という声が足されている。
ここにも、一石を投じたい。原作ファンからすれば、伝説的である無声のままで続く、鬼気迫る山王戦のクライマックにおける攻防戦。その最後の最後に、花道が安西監督の教えのもと、合宿の2万本シュート練習で体得した「左手はそえるだけ」というシュートの基本フォーム。その一言だけ発し、あれだけいがみ合っていた流川からパスを受けて、タイトルでもある“スラムダンク”ではなく、普通のジャンプシュートを試合時間残り数秒で決める。
そして、無言のまま、流川とハイタッチを交わし、その後すぐにプイッっとお互い踵を返し、今までの関係性に戻る。そんな2人に、他のメンバーが抱きしめにかかり、全員で勝利の歓喜に湧き上がる…。これが原作で描かれた迫真のクライマックスである。
はっきり言って、この一連の流れのひとつでも欠けてしまったら、原作ほどの感動は起こらないと思うのが、筆者の考えである。いくら過去の焼き直しをしたくないという原作者の意向があるとはいえ、この改変には疑念が残る。