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改変不満点⑤
最終的にリョータがアメリカでバスケをしている

映画『THE FIRST SLAM DUNK』は、リョ―タが渡米し、沢北と同じコートで試合をするシーンで幕を閉じる。この補足に動揺したファンも多いだろう。この改変に対して、SNS上では賛否がはっきりと分かれている。

そもそも、沢北のライバルは流川であり、原作ではインターハイ後に沢北はアメリカに留学し、流川もいずれ渡米するだろうことがほのめかされる。「なぜ、リョ―タが?」という思いに駆られ、どうにも無理やりなオチだなと筆者は思った次第である。

しかし、ここでは前向きな妄想考察を綴りたい。まず、このアメリカにおける描写は、高校卒業後のものではないかと考えたい。

原作では赤木と小暮といった3年生が引退後、リョ―タがキャプテンに就任している。その1年間でキャプテンとしての自覚が覚醒。そして、海南大付属高校の牧、翔陽高校の藤真、山王工業の深津といった同ポジションのライバルたちが引退したことから、全国屈指のポイントガードとなったのではないか。

しかし、リョータは片親であまり裕福ではない。貧困を創造させる描写も劇中では描かれていた。したがって、「アメリカに留学するのは無理があるのでは?」とも思う人も多いだろう。

しかし、思い出してほしいのは、作者・井上雄彦氏が十数年前から自ら実施している「スラムダンク奨学金」制度のことだ。「スラムダンク奨学金」とは、家庭の経済状況によって留学が難しい優秀な選手を対象に、奨学金を出すというもの。井上雄彦は自身が立ち上げた奨学金制度を、劇中でいわば自己言及的な形で取り上げたのではないか。

リョ―タはキャプテンとして、高校生活を終えたが、バスケ熱は冷めない。そして、なんらかの奨学金制度で卒業後、アメリカに留学したという筋書きなのではないかと、筆者は推測する。

また、全国大会前に流川と初めてまともに話したリョータが、沢北のことを「こいつ、俺と同じ2年なんだぜ」というくだりがある。
ポジション的に沢北とマッチアップしたのは流川だが、同学年としてライバル心を密かに燃やしていたかと考えれば、これまた辻褄が合う(終盤で渡米した沢北が、「こっちでは背は低い方なので、ポイントガードもやる」と発言しているので、同学年の同じポジションとして、アメリカでライバル関係になったとも推測できる)。

色々と言及してきたが、欲を言えば、流川もリョータと同じ大学に留学し、同じチームでプレイをしているという描写があったら、より他楽しめたかもしれない。そして、「行くぞ! 流川!」といったセリフで締めくくるのもよかったのではないか。あくまで、原作ファンである筆者の願望であることは承知の上で、最後に記しておきたい。

(文・ZAKKY)

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