川栄李奈の「受け」の芝居が光る瞬間
―――本作で難しかったお芝居はありますか?
「本読みのときから、上田監督に『もう少しカラッと演じてください』と言われたのですが、カラッと、ってなんだろう?と。監督が求める世界に入るまでが難しかったです」
―――あまり気持ちを込めないってことですか?
「正解が掴めないまま本読みが終わり、自分の中で『こういうことかな』と考えながらお芝居をしていたら監督からOKをいただきました。よかったと思いましたが、いまだに何が正解かよくわからないんです(笑)」
―――映画を拝見させいいただいて、川栄さんすごいなと思ったのが、受けの芝居。上司の熊沢さんが気弱なので“しっかりしてください”と突っ込みつつ、相手の言葉や行いに『はぁ?』とか『えっ!』という咄嗟の反応が抜群で、間合いが絶妙だと思いました。そういう芝居は難しくなかったですか?
「掛け合いの芝居は難しいとは思わなかったです。内野さんはいつも素晴らしいのですが、税務署長役・吹越満さんのお芝居もすごくナチュラルなんです。私がセリフの流れで咄嗟にアドリブでリアクションしても、それを自然に受けてお芝居を成立させてくださいました。ベテランの先輩方に引っ張っていただいて、本当に感謝しています」
―――今回、上田組でお芝居をされて、いかがでしたか?
「上田監督はとても優しい方で、まずはやりたいように演じさせてくださいました。そのあと、作品をよりよくしようとキャストやスタッフと話し合いながら作り上げていくんです。そのやり方がすごくいいなと思いましたし、いい雰囲気の現場でお芝居をさせていただきありがたかったです」
―――上田監督は、主演の内野さんとは脚本作りから一緒に取り組んで仕上げていったと聞いています。最初に読んだ脚本からの変化などありましたか?
「最初に企画書をいただいて、そのあと新型コロナ感染拡大で制作が1年以上延期になったんです。ずっと撮影が始まる話がなかったので『どうなったのかな?』と思っていたら、やっと再開することになり、私の手元に台本が届きました。監督が内野さんと何度も打ち合わせを重ねて脚本を直していったことは私も聞いていたのですが、私がいただいた台本は打ち合わせを経て完成した脚本だったと思います。だから現場での調整はありましたが、大きな変化はなかったですね」
―――待たされていた期間がかなり長かったんですね。
「そうですね。キャストの皆さんが忙しくて、スケジュールを合わせるのに時間がかかったんだと思います。でも1回止まった企画が無事に動いて、撮影ができて、こうして公開を迎えることができたことに感謝です。本当に良かった! と思いました」
―――川栄さんのキャリアについて伺いたいのですが、AKB48を卒業してから、俳優業が本格化していったようですが、AKBに入る前から俳優になりたいと思っていたのでしょうか?
「AKB48に入ってからですね。ドラマの仕事を経験させていただいたことがきっかけでお芝居に興味を持ちました。『俳優になりたい、お芝居がしたい』という気持ちが大きくなっていったので、AKBを卒業したんです。AKB時代はバラエティの仕事が多く、それはそれで楽しくお仕事ができていたのですが、将来のことを考えたとき『私がやりたいことは、お芝居だ』と思ったんです」
―――そんな風に川栄さんを夢中にさせるお芝居の面白さとは?
「普段できないことでも、役を通して挑戦できるということですね。この映画で演じた公務員も初めてでしたし、本来ならできないような職業も体験できますから。そういう面白さに惹かれています」