ホーム » 投稿 » 日本映画 » 劇場公開作品 » 人生観が変わる…久能の言葉に心が救われるワケ。映画『ミステリと言う勿れ』に登場する4つの”神セリフ”を徹底考察&解説 » Page 4

「下手だと思ったときこそ伸び時です」

原菜乃華【Getty Images】
原菜乃華Getty Images

久能と汐路の夜の散歩での会話の中に、中学時代に美術部だったと汐路が語るシーンがある。汐路はかつて絵を描くのが好きだったが「ある時、自分が下手だと思えてきて。才能ない」と思い、辞めてしまったという。それを聞いた久能が彼女に告げるセリフがこれだ。

「本当に下手な時は、下手なのかもわからない。歪んでいても、はみ出していても気づかない。それに気づくのは上達してきたからなんです」

ちなみに原作では、遺産相続の相手となる礼音もこの会話に参加している。かつてサッカーに励んでいた礼音。辞めた理由は、母親が亡くなり、家を助けるためであり、意地になって母親に当てつけをしていたと語る。しかし「本当は自分の限界に理由をつけたかったんだ」と言う。

それに対し、久能は「運動神経は母親から遺伝するらしい」と、礼音と母親とのつながりを示唆する言葉をかけ、若くして亡くなった母親および家族に対し複雑な思いを抱く、彼の心のセメントをほぐすのだ。

普通は、好きなことは諦めずに頑張りなさい。と言ってしまいそうなところを、絵を諦めた汐路や、大人になって後悔している礼音を慰めるのではなく、心をほぐし前向きな気持ちになるような言葉をかけるところが久能らしい。

以上のセリフは映画では描かれていないが、原作には実写版よりも多くの名言が散りばめられている。興味のある方はぜひ原作もチェックしてみてほしい。

1 2 3 4 5 6
error: Content is protected !!