郷土愛によって許される「壮大な茶番劇」
メガホンを取ったのは、『のだめカンタービレ 最終楽章』(前編:2009年、後編:2010年)、『テルマエ・ロマエ』(第1作:2012年、第2作:2014年)など、笑いをドラマに盛り込み、数多くのヒット作を世に放った武内英樹監督。前回よりスケールアップさせた世界観を形にしたことは“さすが”と感じざるを得ない。
「壮大な茶番劇」という謳い文句には嘘はなく、実にくだらない物語だった。しかし、その「くだらない」という言葉は、本作に対する最大の褒め言葉だ。
そこにはどの県にも、他地域から見ればネガティブな面がある一方で、それすらも笑えてしまうほどの郷土愛が存在することに気付かせてくれるストーリーだからだろう。
エンドロールにも注目だ。今回もはなわが主題歌を担当しているが、その歌詞は郷土愛に溢れるものであり、さらに、ミルクボーイの漫才も差し込まれている念の入れようだ。
おそらくは本作も、1作目ほどのヒット作となるだろう。そこで期待されるのは、さらなる続編だ。埼玉を中心とした“首都圏編”、滋賀を中心とした“関西編”ときたら、日本中を巻き込んだ“全国編”を期待せずにはいられないのだ。
気が早いと思われるのも承知だが、“ウチの地方でやってくれ”といった逆オファーも、原作者の魔夜に届く可能性もある。本作によって埼玉が脚光を浴び、県のPRにも一役買うなどの効果を生んだ事実がある。
作品を通じて町おこしを考える自治体が出てきても不自然ではないのだ。
現在の日本の地方都市の現実は、駅周りの繫華街は廃れ、郊外のショッピングモールにしか若い人が集まらないといった画一的な街ばかりだ。このような現状下で「郷土愛」が生まれにくくなってきている。
だからこそ、このような作品が必要なのだ。この作品がヒットしている限り、日本の地方都市もまだ捨てたものではないことの証明でもある。武内監督と二階堂ふみは、今一度、謝罪行脚しなければならなくなるだろうが、是非とも3作目に挑んでほしいものだ。
(文・寺島武志)
【作品概要】
監督:武内英樹
原作:魔夜峰央
脚本:徳永友一
キャスト:GACKT、二階堂ふみ、杏、加藤諒、益若つばさ、片岡愛之助、堀田真由、くっきー!(野性爆弾)、高橋メアリージュン、和久井映見、アキラ100%、朝日奈央、山村紅葉、ハイヒールモモコ、川崎麻世、藤原紀香、津田篤宏(ダイアン)、天童よしみ、戸塚純貴
主題歌:はなわ「#ニュー咲きほこれ埼玉」(Victor Entertainment)
音楽:Face 2 fAKE
配給:東映
©2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会
2023年製作/116分/G/日本
劇場公開日:2023年11月23日
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