『笑いのカイブツ』が残した「笑い」
単独ライブ終了後の夜の駐車場。ネタのウケがイマイチだったことについて、ツチヤは西寺とこんな会話をする。
ツチヤ「こんな笑いじゃ俺が死んでも残らないですね」
西寺「笑いなんて残らないよ。いや残るか、まぁそう構えるなよ。わかるけどさ、笑いなんて、その時誰かの活力になればそれでいいんだよ」
2012年。「ツチヤタカユキ」の名前が毎週ラジオから流れていた頃。彼のネタで笑っていた人たちが、僕の周りにも大勢いる。
ある作家会議で「『笑いのカイブツ』の映画、観られました?」と話してみると、「あれを読んで作家を目指した」や「あの小説を読んでメール投稿に本気になった」と返ってきた。
笑いはその時の誰かの活力になるし、それだけではない。カイブツの生み出した「笑い」は、当時のリスナーの中に残り続け、この世界でまだ生きている。エンドロールに刻まれた「ツチヤタカユキ」の7文字を見て思う。いつか、ツチヤさんと一緒にお仕事できますように。
(文・前田知礼)
【作品情報】
監督:滝本憲吾
原作:ツチヤタカユキ『笑いのカイブツ』(文春文庫)
脚本:滝本憲吾、足立紳、山口智之、成宏基
出演:岡山天音、片岡礼子、松本穂香、前原滉、板橋駿谷、淡梨、前田旺志郎、管勇毅、松角洋平、菅田将暉、仲野太賀
エグゼクティブプロデューサー:成宏基 プロデューサー:前原美野里
音楽:村山☆潤 撮影:鎌苅洋一 照明:神野宏賢、秋山恵二郎 美術:安藤秀敏、菊地実幸 装飾:岩井健志 録音:齋藤泰陽、藤本賢一 衣裳:馬場恭子 ヘアメイク:楮山理恵 編集:村上雅樹 助監督:齊藤勇起 制作担当:後藤一郎 宣伝写真:三宅英文
企画・制作・プロデュース:アニモプロデュース 企画協力:文藝春秋
製作:「笑いのカイブツ」製作委員会
配給:ショウゲート、アニモプロデュース 宣伝協力:SUNDAE
©︎2023「笑いのカイブツ」製作委員会
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
2023年/日本/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー/116分/G
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