ギャラクシー賞獲得のドキュメンタリーをアップデート
そして7月15日、札幌で事件は起こる。ある男性が安倍の応援演説の最中、「安倍やめろ!」とヤジを飛ばす。その瞬間、北海道警の警察官が複数でその男性を取り囲み、力ずくで排除したのだ。時を同じくして、吃音を抱えながらも増税反対を訴えた若い女性も警察官に引きずられるように移動させられ、その後もしつこくつきまとわれた。この日、札幌では少なくとも9人が警察の手によって排除されたといわれている。
この行動を問題視した市民や弁護士らが道警と北海道庁に抗議し、デモ行進にまで発展する。しかし道警は7か月にわたり説明を拒否し。2020年2月になって道警は「ヤジを排除したのは適正だった」と結論付ける。そして、両者の対立は法廷の場に持ち込まれる。
本作の基となったのは、元北海道警の幹部にして裏金問題を追及し続けた原田宏二氏や刑法を専門とする大学教授などへのインタビューを通じ、ヤジ、そして排除した警察の行動についての正当性について法的根拠に基づいて検証。
さらに、警察に排除された2人に加え、プラカードを掲げるために演説会場に来たものの、自身の主張をぶつけることすら叶わなかった老いた女性の考えを訴えた、2020年放送のHBC(北海道放送)のドキュメンタリー番組だ。
数々の証拠映像に衝撃を受けた人々から多くの声が湧きあがり、番組は、ギャラクシー賞や「地方の時代」映像祭賞などの賞を受賞する。そして、排除された市民2人が原告として道警と北海道庁を訴えたことによって、書籍化を経て、さらに映画化されたのが本作だ。
ドキュメンタリー番組として放送されたものよりも、市民から提供された証拠映像も増え、正味46分のドキュメンタリー番組からほぼ倍の100分の作品となっている。監督・制作・編集を務めたのはHBC報道部デスクの山崎裕侍だ。