テーマは「イマジナリーフレンド」という大きな挑戦
『屋根裏のラジャー』の原作は、2014年・イギリスで発刊されたA.F.ハロルドの児童小説『The Imaginary(邦題・ぼくが消えないうちに)』 だ。国内だけでなく各国の文学賞を席巻した名作である。
子どもが想像上でつくる友だち、通称・イマジナリーフレンドが題材。少女・アマンダと、彼女のイマジナリーフレンド・ラジャーを描いている。
アマンダは想像力豊かな少女であり、彼女にかかれば自分の部屋も雪山や草原に変わる。そこには動物や恐竜、天使、雪男、ドラゴンなどが次々に登場し、アマンダとラジャーは日々、そんな「想像の世界」で、はちゃめちゃに遊びまくる――。
まずこの設定に対してアニメ化を考えたことが、とんでもなくチャレンジングだ。想像の世界は端的に言って「なんでもあり」。これほどクリエイターを悩ませるお題は、なかなかない。スタジオポノックの勇気に大拍手である。
金子みすゞの詩『見えないもの』のなかに「まばたきするまに何がある。白い天馬が翅のべて、白羽の矢よりもまだ早く、青いお空をすぎてゆく。」 という一節がある。たしかにその通り。想像力というものは無限大なのだ。そしてアマンダの奔放な想像力を表現したいのならば、ぶっ飛んだ絵を描かなければいけない。しかしあまりに奇天烈過ぎると、お客さんはついていけない。
東京藝大 油画科の入試問題で「絵を描きなさい」という課題が出るのは有名だが、アレに近い。作品作りにおいて「自由」ほど怖いものはないのである。