ジブリ由来の手描きアニメ×CGをはじめとしたデジタル技術
この「わくわくする世界観」を実現できた背景には制作手法がある。ベースは手描きのセル画だ。近年のアニメ制作の王道となったデジタル画ではなく、今作では10万枚以上の手描きのセル画 で作られている。
放送スパンが短いテレビアニメではなく、潤沢な時間と予算があるアニメ映画だからできることだ。
スタジオジブリも、もちろん手描きセル画の文化だ。この手法だからこそ、あの素朴で繊細な表現ができる。そして日本人は、もう遺伝子レベルでセル画が大好きだ。
しかし今作は、手描きだけではない。ふんだんにCGが取り入れられているうえ、フランスのクリエーターと協力して、より深みのある表現を実現した。具体的には「キャラクターの肌の質感」「光と影のライティング」についてアップデートされている。
これが、とても新しい感覚だった。セル画の質感を残しつつも、かなり立体的な仕上がりなのだ。新しい技法を加えると、どこか違和感が生じそうだが、それがない。
これは日本人が慣れ親しんできたジブリアニメの手描き作画がベースにあるからなのかもしれない。いうなれば和モダンみたいな。既存の安定感があるからこそ、思い切って新しい表現に挑戦できているかもしれないと感じた。また従来の「日本アニメを進化させよう」というスタジオポノックの思いが伝わる。