YOSHIKIの思いに涙
純粋な音楽への愛情を感じる作品
本編は、大まかにYOSHIKIの語りによって進むパートと、アーティストとYOSHIKIの演奏するパートに分けられる。
もちろんパフォーマンスシーンも目を引くが、それよりもYOSHIKIが紡ぐ言葉の一つ一つに、胸を打たれた。中でも気持ちを熱くさせたのは、彼の「ファンが僕らのヒーロー」という言葉や、「血だらけの翼でも羽を広げて飛ぶ」という、強い思いを感じるメッセージだ。
本来であれば、音楽を提供してくれるアーティストこそ、私たちのヒーローだ。しかし、YOSHIKIは音楽を聴いて、支えてくれるファンこそが自分のヒーローだと言う。ファンがこの言葉を聞いたら、その優しさに思わず涙してしまうだろう。
そして、人生には乗り越えられないような障害が降りかかってくることがある。
本編でYOSHIKIの口から語られる、YOSHIKIが父を失った怒りをぶつける先がなくてロックに向かったというエピソードや、自身が幼少期に病気を患い、入院生活を強いられていたことなど、人生の中で辛い経験を乗り越えてきた彼だからこそ出る言葉に、目には見えない愛や、エネルギーが体全体に染み渡ってくる。
YOSHIKIが今まで見てきた世界、乗り越えてきた困難。決して楽な人生ではなかっただろうが、努力を忘れなければどんな困難も乗り越えられるという力を分けてもらったような気がする。
ただし、映画として改善の余地があると感じたシーンも、僅かではあるがあった。
肝心の演奏シーンでは字幕がなく、音楽にどんなメッセージが込められているのか理解できなかったことが悔やまれる。もちろん、臨場感と言葉では伝わらないメッセージを音だけで届けたいという思いで、あえて字幕をつけなかったのだろうが…。
その点を除けば、世界的アーティスト、YOSHIKIの日頃語られることのない思いを余すことなく受け取ることができる貴重な作品であり、音楽映画として充実した出来栄えとなっている。彼のファン以外にもぜひ見てほしい作品だ。
【作品情報】
監督:YOSHIKI
出演:HYDE(日本)、SUGIZO(日本)、SixTONES(日本)、ザ・チェインスモーカーズ(アメリカ)、セイント・ヴィンセント(アメリカ)、ニコール・シャージンガー(アメリカ)、ジェーン・チャン(中国)、リンジー・スターリング(アメリカ)、スコーピオンズ(ドイツ)、サラ・ブライトマン(イギリス)
2023年/92分/G/アメリカ/配給:東宝
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