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エンディングが意味するものとは?

この映画では、アイルランド内戦に関する情報が断片的に散りばめられており、ライフルや大砲の音が遠くから聞こえてくることもあり、島の民にとってそれは世間話のネタになる。

序盤でパドリックは「何のために戦っているのかさえわからない」と発言する。このセリフは、マクドナー監督がパドリックとコルムの確執に、アイルランド内戦を重ねているのではと、観る者に感じさせる。

また、映画のラストシーンでは、パドリックが家を焼き払った後、コルムと海岸で出会う。コルムは、「戦争は終わりに近づいていると思う。海の向こうでも。自分と親友の間でも。もう戦いはやめようと思っている」と告げる。パドリックは怒りに燃え「まだ終わってはいない」と言い、コルムに視線を送りながら、「前に進めないこともあるんだ」と言う。

ラストシーンには、丘の上からその2人を見守るマコーミック夫人の姿がある。黒マントの彼女の存在は、コルムとパドリックの間に視覚的な溝を作っており、それは彼ら2人の“友情の死”をどうやら意味しているようだ。

パドリックの愛する人たちを全て失い、コルムの家と大事な親友を失うという、世界で起きている戦争と同じように、何のために戦っているのかさえ忘れてしまった2人の受けたダメージは大きく、もう引き返すことはできない。

最後のシーンで、島のビーチから本土を見つめる2人は、争いが起きる前と起きた後で、異なったことを考えているのかもしれない。

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