モアナとマウイのバディ関係
『モアナと伝説の海』1作目は画期的だった。ポリネシアの神話や文化にインスパイアされた物語、海にこだわった流麗かつ美しいアニメーション、ハワイ語やタヒチ語のバージョンも作られた「How Far I’ll Go」など、リン=マニュエル・ミランダが生み出す歌の数々。
そして、なんと言っても、これまでのディズニー・プリンセス像を刷新するようなモアナのキャラクター造形だろう。ディズニーで初めてポリネシア系のヒロインが誕生したというだけではない。これまでの手足が長く細い主人公たちとは違い、少し筋肉質にも見える体型は斬新だった。
また、モアナはマウイとの冒険を通じて自己やルーツを見つめ成長していくが、2人の間にロマンスは起こらないというのも特筆すべきだ。海を操る能力を持ち、船に乗って大海原へ繰り出すモアナは、プリンセスというよりはヒーローのようであり、半神マウイとの関係性はバディムービーのようでもあった。配役含め、いくつもの点において、不自然ではない仕方で多様性を広げるこの映画は、ポリティカル・コレクトネス、所謂ポリコレの観点においても賞賛の声が上がった。