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ビジネスにおける協調性

木村拓哉
木村拓哉【Getty Images】

 フレンチフルコースについて私が詳しいわけではないので、あくまでイメージであると読み進めてほしい。

 まずは前菜のイメージ。映画を見て気になったのは厨房で日本語、英語、フランス語、韓国語を俳優陣がきれいに操っていること。ふだんであれば聞き苦しさも生じるのかもしれないが、それがまったく感じられなかったのはお見事。

 三つ星を目指すクルーの一員、相沢は劇中でサラダを作っていた。それが多種の野菜を一緒くたにするような斬新なレシピ。ただどれもが邪魔も喧嘩もせず、味を完成されていた一皿。

 続けて魚料理。ドラマ『グランメゾン東京』でも見られた、ビジネスストーリーにおける”協調性”の重み。天才と呼ばれた尾花はパリでも一匹狼であり、気がめちゃくちゃ強い。市場で業者から良い素材も分けてもらえず、スタッフたちとも距離感が広がっていく。

「チャレンジで逃げるから三つ星に手が届かねえんだよ!」

 そんな尾花がいくつもの困難と挫折を機にして傲慢さにやっと気づき、自省をする。そして新人のスタッフ・小暮佑(正門良規/Aぇ! Group)にこう聞く。

「俺に足りないものは何?」

 一般的にも年齢を重ねていくと、嫌味を言う人間はいても指摘をしてくれる人間は格段に減る。自分の視界だけでは到底見えない世界を持った、若手に頭を下げるのは本気だからできるのだと、尾花から悟る。そして三つ星を目指すコースをチームで作る際、尾花は「任せる、おまえに」をひたすら繰り返す。これだ。敏腕だと言われる経営者は自分以外の人間を信用して、任せるというスタンスを持っている。ビジネスコンテンツにおいて、すべて自分がチェックしている経営者が、業績を順調に伸ばしたという例は聞いたことがない。

 自分以外の誰かがいないと、一皿は成立しないのである。食材、調理、サーブ、プロモーション。これらが一体となって、初めて完成するのだ。この協調性がコースでいう魚料理だろうか。

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