息子に夢を託した父の愛が溢れる感動作

『リトルダンサー』(2000)

ジェイミー・ベル
ジェイミー・ベル【Getty Images】

監督:スティーブン・ダルドリー
脚本:リー・ホール
出演:ジェイミー・ベル、」ジュリー・ウォルターズ、ゲイリー・ルイス、ジェイミー・ドラヴェン、アダム・クーパー

【作品内容】

 1984年。イングランド北東部の炭鉱街で暮らす11歳のビリー(ジェイミー・ベル)は、幼い頃に母を亡くしている。

 炭鉱労働者の父ジャッキー(ゲイリー・ルイス)と兄トニー(ジェイミー・ドラヴェン)と認知症を患う祖母(ジーン・ヘイウッド)との4人暮らしだ。

 父にボクシング教室に嫌々通わされているエリオットは、ある日、隣で行われているバレエレッスンに興味を持つ。先生のウィルキンソン(ニコラ・ブラックウェル)は、彼にバレエの才能を見い出して、個人レッスンが始まることになり…。

【注目ポイント】

 本作はバレエ・ダンサーに憧れた少年のサクセスストーリーだが、父親と息子の親子ドラマとしても見応えがある。

 ダンスを男が習うなんてバカバカしいとばかりに息子の夢に反対していた父親・ジャッキーの気持ちが徐々に変化していく様子に心打たれるのである。

 炭鉱で働く厳格な父ジャッキーは、妻に先立たれたうえに、炭鉱不況のせいで仕事にもありつけない。組合のストに参加して、不満を吐き出す毎日だ。

「バレエなんか!男はレスリングやボクシングに決まってる」

 保守的なジャッキーが、クリスマスの夜、ビリーの踊るダンスを間近で見たことがきっかけで彼の才能を確信する。そして、自分が軽蔑していたスト破りの側に回ってまで、ビリーのロイヤル・バレエ学校の受験資金を稼ぐことに決めるのだ。

「ビリーの夢を叶えてやるために許してくれ。俺たちには未来がない。だが、ビリーには夢がある」

 スト破りを止めようとするビリーの兄・トニーの説得に、その場で泣き崩れながら懇願する父・ジャッキー。涙と共にあふれ出す父親の愛情に、観る者は画面を直視できなくなるのである。

 見事、ロイヤル・バレエ学校に入学したエリオット。数年後…。成長したエリオットは、ロイヤルバレエの大劇場の舞台に立っている。踊る演目は、「白鳥の湖」だ。

 その姿を観客席で涙を浮かべながら見る父のまなざしは、さまざまな想いがあふれだす心に染みついて離れない名シーンと言えるだろう。

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