本物の三つ星シェフによる料理監修
物語のもう一つの主役ともいえるのが劇中に登場する料理の数々。”ミシュランの三つ星”を目指す一流の料理人たちが生み出すメニューということで、それ相応の説得力を持つ画面の強さが求められる。
ドラマシリーズではミシュランガイド東京で17年連続で三つ星評価を受け続けている岸田周三が料理監修を務めたが、映画では2020年にフランス版ミシュランガイドにおいて、アジア人初でなおかつフランス料理で三つ星を獲得した“Restaurant KEI”の小林圭が料理監修を務めている。本物の三つ星シェフによる“三つ星を目指す料理”の数々は大きな見どころと言えるだろう。
また、クリエイターの面でいえば、監督・塚原あゆ子×脚本・黒岩勉のタッグに触れないわけにはいかない。ドラマシリーズから継続のコンビではあるが、両者ともに現在最も注目を浴びている監督、脚本家である。
塚原あゆ子監督はTBS系列のドラマ作品でキャリアを積み、近年では「グランメゾン東京」に加えて『アンナチュラル』(2018)、『MIU404』(2020)、『最愛』(2021)と話題作を連発。さらには現在日曜劇場で放映中の『海に眠るダイヤモンド』も手掛けている。
映画では2018年の『コーヒーが冷めないうちに』で長編デビュー。その後、少し間が空いたが2023年の『わたしの幸せな結婚』がヒット。今年に入ってからは『アンナチュラル』、『MIU404』と世界観を共有する『ラストマイル』が興行収入58億円を超える大ヒットなった。本作『グランメゾン・パリ』に続き坂元裕二脚本、松たか子&松村北斗共演の『1ST KISS ファーストキス』も2025年2月に公開が控えるなど、映画界でも活躍ぶりを見せている。
脚本の黒岩勉も目下、最も作品が注目を浴びる脚本家の1人。
『キングダム』シリーズ4作品に加えて、劇場版も含めて『TOKYO MER~走る緊急救命室~』、『ゴールデンカムイ』と立て続けに大型企画に参加。ドラマも近年の作品だけでも「マイファミリー」(TBS系、2022)、「ラストマン-全盲の捜査官-」(TBS系、2023)などを手掛けて、今冬も「全領域異常解決室」(フジテレビ系、2024)が大きな話題を呼んでいる。
この2人が両輪となってドラマを回しているおかげで“パリで日本人が三つ星を目指す”という、一歩間違えると恐ろしく空虚な物語になりかねない『グランメゾン・パリ』という作品をしっかりと地に足が着いたものに仕上げた。
(文・村松健太郎)
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