いかにして「怪物」は誕生したのか? 映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』評価&考察レビュー
アメリカ大統領に成り上がった男、ドナルド・トランプの映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が絶賛公開中だ。若き日のトランプが悪名高き敏腕弁護士に導かれ、トップへ君臨するまでの道のりを描いた伝記映画となっている本作の魅力を徹底解説する。(文・島晃一)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:島晃一】
映画・音楽ライター、DJ。福島県出身。『キネマ旬報』、『ミュージック・マガジン』、『NiEW』などに寄稿。『菊地成孔の映画関税撤廃』(blueprint)で映画『ムーンライト』のインタビューを担当。J-WAVE「SONAR MUSIC」の映画音楽特集、ラテン音楽特集に出演。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」や『散歩の達人』では、ペデストリアンデッキ特集といった街歩きの企画にも出演、協力。渋谷TheRoomでクラブイベント「Soul Matters」を主宰している。
大統領を作った男
本作は、1月20日にアメリカ合衆国大統領として2回目の就任を迎えたドナルド・トランプの伝記映画だ。1970年代から1980年代のニューヨークを舞台に、不動産実業家としてのトランプの姿を通じて、その原点を探求している。
タイトルは、トランプがホストをつとめたリアリティ番組『アプレンティス』(NBC、2004~)に由来する。「見習い」や「徒弟」を意味する表題の通り、若きドナルド・トランプは、メンターである弁護士ロイ・コーンと出会い、徐々に変貌していく。
成功を夢見るトランプは、とある高級クラブでコーンを見かける。トランプの父親は黒人入居者への差別で政府に訴えられていた。トランプはその状況を打開するため、ロイ・コーンに弁護を依頼する。悪党だが凄腕として知られるコーンは、「哀れな坊や」であるトランプを気に入り、「勝つための3つのルール」を伝える。
「ルール1。攻撃、攻撃、攻撃だ」
「ルール2。非を認めるな。全否定しろ」
「ルール3。どれだけ劣勢に立たされても勝利を主張しろ。決して負けを認めるな」
脅迫を用い、法や倫理を無視することに戸惑うトランプに対して、コーンは言う。「批判は気にしたら負けだ。何が正しいとかそんな基準は存在しない。大切なのは勝つことだ」。
勝つための考えと手段、立ち振る舞いを指導されたトランプは、事業を次々と拡大させる。しかし、彼はコーンの想像を超えるほど変貌し、師弟関係も崩れはじめていく…。