フランケンシュタイン映画との類似点とは?
本作は、『ボーダー 二つの世界』(2018)のアリ・アッバシが監督をつとめた。ドナルド・トランプを演じたのは、『キャプテン・アメリカ』シリーズ(2011-)などで知られるセバスチャン・スタン。ロイ・コーン役を『メディア王 〜華麗なる一族』(2018-2023)のジェレミー・ストロングが演じた。
アリ・アッバシは人間と怪物の境界を描いてきた監督だが、本作は、若きトランプが怪物によって創り変えられ、より大きな怪物になっていく過程を浮き彫りにした。ジェレミー・ストロングも、インタビューで、『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』を「フランケンシュタインの映画」だと語っている。
そのジェレミー・ストロングが、ロイ・コーンの悪魔的な魅力を表現した冒頭から見事だ。ギラっとした目で相手を見つめ、まくし立てる。ローゼンバーグ事件の話をすることで赤狩りの急先鋒だった過去を、トニー・サレルノを紹介することで自身がマフィアの相談役であることをほのめかし、自分の存在の大きさを誇示する。
ドキュメンタリー映画『ロイ・コーンの真実』(2019)でも、「邪悪」で「アメリカ文化の副産物」と形容される悪徳弁護士コーンだが、勝つためにあらゆる手段を用いトランプを成功に導いていく本作の前半は、まるでアメリカン・ドリームを体現した物語のようだ。軽快なディスコミュージックもその雰囲気を彩っている。
コーンは、トランプに「私の言うことに100パーセント従え」と言う。コーンの教えによって、独裁的な父親フレッド(マーティン・ドノヴァン)から自律したトランプ。しかし、ある日、トランプは、第2の父親とも言えるコーンの反対を押し切ってイヴァナ(マリア・バカローヴァ)と結婚する。