勢力を増すトランプと弱体化するコーンの対比
初めての反抗をきっかけとして、トランプが主導権を握るようになり、コーンを超えていく。と同時に、それまで大きく見えてたコーンを、小さく映すようになる。トランプタワーを建てる際、市長にたたみかけるように話し、部屋を出ていくトランプと、市長と共にポツンと残されたコーン。後半、弁護士資格剥奪の危機に陥り、病状も悪くなると、攻撃的だったコーンが腕を組むなどの防衛反応を見せる。また、序盤はトランプに対して上から見るか、対等に合わせていた目線も、下から見上げるようになる。
勢いを増すトランプと、入れ替わるように弱っていくコーンの捉え方は素晴らしい。最も象徴的なのは、トランプがコーンの誕生日にダイヤのカフスボタンをプレゼントするシーンだろう。コーンは喜ぶも、それがダイヤではなくジルコニアだと知り絶句する。
そして、アメリカ国旗の形をしたケーキを見た途端に涙するのだ。トランプにスピーチを求められ、弱々しく「言葉が出てこない」と返すコーンは、最初の悪魔的な印象はなく、もの悲しく見える。
一方で、トランプはより独善的、攻撃的になっていく。妻をレイプして主体性を奪い、判断力の弱った父親を騙そうとし、恩人であるコーンにも嘘をつく。コーンの死の直後、頭皮の切除手術を受け、大きく縫ったトランプの頭部を映したショットは、まさにフランケンシュタインの怪物のようだ。