虚栄心に満ちた怪物

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
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 アメリカンドリームを体現したような前半と、徐々に怪物性を増していく後半を通じて、『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』は、勝利至上主義と虚飾性が現在のトランプを生み出したことを示唆している。

 その2つを凝縮したシーンが、この映画のラストだ。トランプは、自伝のゴーストライターに「人間は動物だ。みんな裕福になりたい。勝って威張りたいんだ」と言い、「勝つための3つのルール」を披露する。このルールについて、ライターが「ここ30年のアメリカ外交に似てる」と評するのもポイントだろう。しかし、どこでこのルールを思いついたのか聞かれると、コーンの教えではなく自分のオリジナルだとし、生まれつきの才能と自分の偉大さを誇示する。

 教えてもらったものを自分が起源だと主張する上で、「過去を深掘りするのはやめてくれ」とライターに釘を刺すトランプは、勝利のために手段を選ばないだけでなく、虚飾、虚栄心にも満ちていると言える。ダイヤと偽ったカフスボタン、妻を説得し受けさせた豊胸手術、自らの頭皮縮小手術もその現れだろう。

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