2つのショットで提示される本作のテーマ

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
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 ここで注目したいのは、ゴーストライターと話す直前、天井に逆さまに映るトランプの姿を捉えた後で、カメラを下に振り、再びトランプを撮るショットだ。これは、前半にロイ・コーンの部屋で、鏡張りの天井に映る腹筋中のコーンを撮ったショットを反復している。

 コーンの部屋には大量のぬいぐるみが置いてあるが、それに触れることは避けられ、ニクソンら権力者との写真については嬉々として話す。コーンは、自らの「攻撃的でタフ」なイメージを守るために腐心し、ゲイであることを隠しつつ、同性愛者を脅し迫害した。

 天井に逆さまに映る姿を撮った2つのショットの反復は、トランプとコーンの力強いイメージが、虚像、虚飾に過ぎないと暗示するかのようだ。

 ところで、当たり前ではあるが、「勝つための3つのルール」は、この2人や、トランプを支持する人々、アメリカという国に特有の考え方ではない。劇中のように脅すとまではいかないが、とにかく攻撃的で、自らの非を認めずに徹底するコミュニケーションの仕方は、思想を問わず、SNSではいまやありふれた光景だ。

 コーンに魅せられた若きトランプのように、いつのまにか怪物になっている可能性は、誰にでもあるのだ。

(文・島晃一)

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