悪の中に垣間見える正義

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 ところで、ジェイソン・ステイサムの魅力とはなんだろう。それはおそらくヒールの中に見え隠れする正義感だろう。

 従来のアクションスターは、正義感を全面的に押し出したヒーローが多かった。そのため、ヒーローの印象が強くなってしまい、ヒール役を演じるのは挑戦だと言われてきたのだ。

 アクションスターの代表格であるアーノルド・シュワルツェネッガーが『バットマン&ロビン〜Mr.フリーズの逆襲』(1997年)でMr.フリーズを演じることが決まった際には、あのアーノルドが悪役を演じるとあって大きな話題になったし、『エンド・オブ・デイズ』(1999年)のラストで命を落とした際には、あのアーノルドが死ぬなんて、とアクション映画が転機を迎えたとすら言われた。

 トム・クルーズが『インタビュー・ウィズ・バンパイア』(1994年)でヒールなレスタトを演じた際には、原作者のアン・ライスから「イメージと違う」と批判の声が上がり、『コラテラル』(2004年)で冷血な殺し屋を演じた際には、あのトム・クルーズが本格的な悪役に挑戦、と大々的に宣伝された。

 つまり、ヒーローの印象が強い俳優が悪役に抜擢されると、キャリアにとって大きな転機であり、観客には厳しい目で判断されることを意味している。

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