ステイサムが歩んだ「裏道街道」
だがステイサムは違う。彼の俳優としてのキャリアは「ワル」から始まった。学生時代の水泳選手だった頃にモデルにスカウトされ、人前に出るようになったが、銀幕デビューは『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998)だ。
ガイ・リッチー監督による初長編映画となった本作は、悪党4人組を中心としたクライムアクションだ。キャスティングにこだわった監督は、「本物のワル」を求めた。そこで白羽の矢がたったのが、父親の違法なビジネスを手伝っていたステイサムだった。
このような経緯があるからか、ジェイソン・ステイサムは正統派ヒーローとしての道は歩んで来なかった。『スナッチ』(2000年)では裏ボクシングのプロモーターを演じ、出世作となった『トランスポーター』(2002年)では高額な報酬のためならどんなものでも運ぶ運び屋を演じた。『セルラー』(2004年)では悪徳刑事を演じ、容赦無く女性を追い詰めている。
ヒールとヒーローを併せ持つステイサムは、A級映画ではサイドキックや消耗品(エクスペンタブル)として、B級映画では影のあるヒーローとして重宝される。このどっちにも使える汎用性の高さがステイサムの最大の魅力であり、名前を聞くだけで何かを期待させてしまう所以なのかもしれない。