ジェシカ・チャステイン×ピーター・サースガードに世界が絶賛…映画『あの歌を憶えている』で映し出される息を呑む演技とは?

text by 編集部

ジェシカ・チャステインが主演を務める映画『あの歌を憶えている』が、2月21日(金)より、新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国公開される。今回は、アカデミー賞女優ジェシカ・チャステインとヴェネツィア国際映画祭男優賞受賞ピーター・サースガードが魅せた本作の演技について解説する。(文・編集部)

実力派俳優の演技に世界が絶賛

© DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023
© DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

 本作は、NY・ブルックリンを舞台に、記憶に翻弄される不器用なふたりが出会い、新たな人生と希望を見つけていく愛のヒューマンドラマだ。

 シングルマザーであるシルヴィア役のジェシカ・チャステインは、過去にトラウマを抱え、アルコール依存症に立ち向かいながらも娘をひとりで育て上げる一見パワフルだがどこか不安定な女性を繊細な演技で表現し、自立した母親と女性としての自分、2つの顔の演じ分けは曖昧な境界線の中で説得力を持ちながら体現した。

 わずかに残る遠い記憶を慈しむ若年性認知症を抱えるソール役のピーター・サースガードは、この難しい役柄を穏やかで包容力のある演技で魅せた。自ら“認知症の再考”というグループに連絡を取り、運営している医師や患者と時間をかけて交流することにより、ステレオタイプの認知症ではないレベルまで知識を高め役作りに挑んだという。忘れたくない記憶が消えて行ってしまう残酷な現実に屈せず、時には怒りをあらわにし、反抗するその姿に心打たれること間違いなしだ。

 人には誰しも、もう二度と立ち直れないかもしれないと思う時がある。暗い夜がいつかは明けることなど信じられず、降り続ける雨の中、太陽の光も思い出せない。そんな日々を送っていたふたりが、何かに導かれるように出会い、互いの存在を肯定し、そばに寄り添い、背負ってきた荷物を分け合い、生きる喜びに目覚めていく。それでも追いかけてくる過去の影を断ち切り、新たな人生と希望を見つけ出すまでを繊細な感情の機微を見事に演じ切り、観る者の心を温かく抱擁する愛のヒューマンドラマへと昇華した。

【作品情報】

監督・脚本:ミシェル・フランコ
出演:ジェシカ・チャステイン、ピーター・サースガード、メリット・ウェヴァー、ブルック・ティンバー、エルシー・フィッシャー、ジェシカ・ハーパー
2023年/103分/アメリカ・メキシコ/英語/シネマスコープ/5.1ch /原題:MEMORY/日本語字幕:大西公子
配給:セテラ・インターナショナル
© DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023
公式サイト

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【了】

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