川の流れが表す”残酷な時の流れ”が胸を打つ

『リバー・ランズ・スルー・イット』(1993)

映画『リバー・ランズ・スルー・イット』
映画『リバー・ランズ・スルー・イット』劇中カット【Getty Images】

監督:ロバート・レッドフォード
キャスト:クレイグ・シェイファー、ブラッド・ピット、ジョセフ・ゴードン=レビット、トム・スケリット、ブレンダ・ブレシン、エミリー・ロイド、エディ・マックラーグ、スティーブン・シェレン、バン・グラベイジ、ニコール・バーデット、スーザン・トレイラー、ロブ・コックス、マイケル・カドリッツ、バック・シモンズ、アーノルド・リチャードソン

【作品内容】

20世紀初頭のアメリカモンタナ州ミズーラ。厳格な牧師家庭で育てられた兄のノーマン(クレイグ・シェイファー)と弟のポール(ブラッド・ピット)は、父から習ったフライ・フィッシングで結ばれていた。彼らは、それぞれの道を歩むが…。

【注目ポイント】

 初監督作品『普通の人々』(1980)がアカデミー賞で4部門(作品・監督・助演男優・脚色賞)に輝くなど、俳優としてのみならず、映画監督としても傑出した才能を誇るロバート・レッドフォードによる3本目の監督作品である。
 
 ノーマンとポールの兄弟は、厳格ながらも理解ある牧師の父と寛容な母のもと、モンタナの広大な土地で伸び伸びと育っていた。幼少期から兄弟はいつも一緒。喧嘩をしたのも一度きりという仲の良さであったが、環境の変化により、2人の間に距離が生まれる。兄のポールは大学進学のために未知の土地で暮らすようになり、弟は地元の大学を卒業後、新聞社に勤め、故郷へ戻らなくなる。

 別々の道を歩みはじめる2人だが、会えば”兄弟の距離”はいつでも縮まる。空を見ながら未来を語り合った記憶、父に習ったフライフィッシングをした記憶を共有する2人の絆は普遍的である。

 しかし、物語が進むにつれて、2人の人生は、やはり異なる流れに属することが明らかになる。

 ノーマンは大学教授の職を得て、妻と共にシカゴで堅実に暮らすことに決め、ポールは地元に残り新聞社の記者をしつつ、気ままに生きることに決めるのだ。

 父と兄弟の3人で、渓流にフライフィッシングをしに行く朝。ポールは、芸術品のような幻の大物を釣り上げる。

「弟のポールが立っていたのは、ブラックフットの川辺ではなく、この世を超えた空間だった」

 兄ノーマンの回想と共に映し出される川の輝きは、音もなく過ぎていく”残酷な時の流れ”のようだ。

 本作で、幼いころのノーマン役として出演しているのは、『500日のサマー』(2009)のジョセフ・ゴードン=レビット。幼き頃の彼の芝居をチェックするのも、本作の乙な楽しみ方かもしれない。

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