「ハイレベルなストーリーテリング」アニメのプロが解説する、映画『野生の島のロズ』の魅力とは? 評価&考察レビュー

text by 諏訪道彦

アメリカの児童文学作家、ピーター・ブラウンが手がけた「野生のロボット」をアニメ化した長編映画『野生の島のロズ』が全国の劇場で公開中だ。今回はアニメ『名探偵コナン』の初代プロデューサーであり、今まで数々の名作を世に放ってきたテレビプロデューサーの諏訪道彦さんに、本作の魅力を紐解いてもらった。(文・諏訪道彦)

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【著者プロフィール:諏訪道彦】

1959 年愛知県生まれ。「シティーハンター」「名探偵コナン」「犬夜叉」など企画・プロデュース。劇場版「名探偵コナン」シリーズは23作目「根性の拳」まで企画・プロデュース。2023年10月「株式会社アスハPP」設立。現在は引き続き新作アニメーションの企画プロデュース業を行う。現在大阪芸術大学芸術計画学科教授。

水の表現にみるアニメーション技術の進歩

Ⓒ2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.
Ⓒ2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

 もはやアメリカの方からやってくるアニメ映画は、ディズニーとかと決まっていないのは常識です。ディズニー傘下のピクサーはメジャー志向の作品を連発、いろいろな賞取り最前線だし、ドリームワークスはもう四半世紀以上にわたって、なんというかエッジの効いた作品を世に送り出してます。今回はそんなドリームワークスアニメーションの制作となる(正確には3社らしい)「野生の島のロズ」を鑑賞しました。

 1986年からTVアニメーションプロデュースをしている私からすると、もう今のアニメーションはまったく別物。いや、セル画とデジタルの違いとか、そんな要素はもちろんあるのですが、やっぱりひとことで言うなら、技術の進歩による格段のクオリティ向上です。見事な水の表現なんかどうやっているのでしょう。そしてそれが日本のアニメーションとアメリカのそれとは、なぜか肌触りが異なる気がしてる、そんな点がこのところ強く興味を持つところだったりします。

 さてこの作品の主人公はロボットの「ロッザム7134、通称ロズ」、ですが、ほかに雁の子ども「キラリ」と、それを食べようとしてた空腹のキツネ「チャッカリ」がメイン。他にも多くの野生の動物しかいない大きな島で、そこに嵐の影響で漂着して唯一生き残った“異世界からの怪物”ロズが巻き起こす物語であります。

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