人間的な葛藤を赤裸々に描くーー従来の環境映画にはない魅力

© 2019 ALL TERRITORIES OF THE WORLD   © 2019 GoodThing Productions Pty Ltd, Regen Pictures Pty Ltd
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 デイモン監督自身も「勉強すればするほど行動を正す難しさに気づいた。見ないふりをして諦めたくなるのも分かる」という正直な心情を吐露している。その人間味は多くの人が共感を抱く部分かもしれない。そこが時に清廉潔白さを求め過ぎて観客を息苦しくさせてしまうこれまでの環境映画とは大きく異なるアプローチだと感じた。かといって未来を諦めるわけではない。そもそもわたしたち大人には諦める権利すらないことを本作は示唆している。随所にインサートされる100人の子どもたちへの理想の未来についてのインタビューだ。

「海から生き物が消えたら自然とは言えなくなる」
「動物を殺すのと森を切り倒すのをやめてほしい」
「いろんな工場が森を切り倒して作られて野生動物を傷つけながら製品を作ってる。よくないのにみんな無視してる」
「銃で脅し合わないで」
 子どもたちの言葉は、わたしたち大人が狂っていることに気づかせてくれる。自分たちが欲望とエゴに塗れた狂人であることに。
「海で泳げないならビーチとは言わない」
「サンゴを守ってほしい」
「平等な機会に恵まれますように」
 そこには、デイモン監督やわたし自身の娘たちがともに未来を生きていく子どもたちがどのような未来を望んでいるのかという問い掛けに対する答えがある。

 それは、わたしたち大人が選択すべき未来でもある。そう、未来は大人たちのものではない。未来に生きる子どもたちのものだ。そして、地球で生きる175万種の多様な生き物たちのものなのだ。

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