日本人女優・初音映莉子の演技にも注目

映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNWON』
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 ボブを取り巻くキャストたちも素晴らしい。

 シルヴィ役のエル・ファニングはチャーミングだし、ジョーン・バエズを演じたモニカ・バルバロの歌もプロ級。そして、物わかりの良いオトナ側となるピート・シーガーを、反体制の極みのような役ばかりやってきたエドワート・ノートンが演じているのも興味深い。その隣にいる日本人女優、初音映莉子の自然な溶け込み方にも驚いた。

 どんなジャンルでもこなす職人肌のジェームズ・マンゴールド監督はさすがの安定感で、60年代の匂いを的確に表現。当時のニューヨークの町中で鳴っていた雑多な音も自然に盛り込み、この作品をただの歴史モノではなく、ちゃんと「音楽映画」に仕上げている。

 マンゴールド監督はジョニー・キャッシュの伝記映画『ウォーク・ザ・ライン/君に続く道』を撮っているが、本作にもボブと共鳴する反体制派シンガー的な位置でジョニー・キャッシュが登場。とことん不良でカッコよく描かれており、監督的にはボブ・ディランより思い入れが強そうだ。

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