フォークからロックへーー革命を描くクライマックス
クライマックスでは、ボブがアコースティック縛りの不文律があったニューポート・フォーク・フェスティバルにエレキギターを持ち込むという「反乱」を描いているのだが、ここが本作の評価の分かれるところかもしれない。いまの感覚でみると、なんでそんなことでモメるのかがあまり伝わってこないので、個人的にはややカタルシス不足だった。
あと、ボブがやたらとタバコを吸っている場面が多く出てくるが、これはマリファナや薬物の暗喩なのだろう。このあたりの領域に表現として踏み込まなかったのは、制作側のレイティングの都合か、やはり「本人許可」問題なのだろうか。
結果的に、授業で見せられる教科書的なつくりになっているが、それでもボブ・ディランという天才の不遜で純粋な生き様は伝わってくる。孤高のアーティスト、ボブ・ディランの音楽と詞をティモシー・シャラメの繊細な演技と歌を堪能できる、マスターピースになり得る伝記映画だ。
(文・灸 怜太)
【作品概要】
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ティモシー・シャラメ, エドワード・ノートン, エル・ファニング, モニカ・バルバロ, ボイド・ホルブルック, ダン・フォグラー, ノーバート・レオ・バッツ, スクート・マクネイリー
2024年製作/140分/G/アメリカ
配給:ディズニー