映画『知らないカノジョ』評価&考察レビュー。miletの演技に驚いた…観る者を“好きにさせる”芝居と主題歌の魅力とは?

text by ばやし

中島健人主演、milet映画初出演にして三木孝浩監督の劇場公開最新作『知らないカノジョ』が公開中だ。恋に落ちてから8年、喧嘩した翌朝、二人の出会わなかった世界が始まる。異色のファンタジック・ラブストーリーの見どころを解説する。(文・ばやし)

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【著者プロフィール:ばやし】

ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。

歌がもたらす悦びを描いてきた三木孝浩監督作品

©2025『知らないカノジョ』製作委員会
©2025『知らないカノジョ』製作委員会

 映画『知らないカノジョ』は、中島健人とmilet、ふたりの眩いほどの魅力が詰まりに詰まった恋愛映画だった。

 彼らの演技を余すことなく映像に映し出したのは、数々のラブストーリーを世に放ってきた三木孝浩監督。彼のフィルモグラフィには音楽を扱った作品がいくつもあるが、中でも代表作と言えるのが2010年に公開された『ソラニン』だろう。

 三木が初めて長編劇映画の監督を務めた記念すべき作品であり、浅野いにおの原作漫画に漂う空気感と淡々と過ぎていく日常への焦燥感を、映像によって見事に再現している。宮崎あおい扮する芽衣子が歌う「ソラニン」のライブシーンは、未だに多くの人々の脳裏に焼きついているはずだ。

 さらに、ロックバンド・GalileoGalileiの同名曲が原案となった『管制塔』(2011)や、離島に住む少年少女たちが合唱を通して想いを共有していく『くちびるに歌を』(2015)でも、ストーリーにおいて音楽が重要な役割を担っていた。

 そんな三木孝浩監督の最新作となる『知らないカノジョ』は、音楽と恋愛を掛け合わせたストーリーにファンタジックな要素が追加されている。その点で本作は、三木がこれまで紡いできたテーマを踏襲しつつ、新境地を拓いた作品と言えるだろう。

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