復讐の彼方へ

リボルバー
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 それは本作に登場する男がひとり残らずクズという設定にも現れている。

 後輩刑事のシン・ドンホ(キム・ジュンハン)はスヨンにフラれた腹いせに彼女の足を引っ張ろうとする嫉妬深い男だし、彼やユンソンを利用してスヨンを片付けようとする警察本部長(キム・ジョンス)も金に正義を売った悪徳上司だ。

 極めつけは彼らを巨万の富で操っているアンディ(チ・チャンウク)。スヨンに対価を約束した張本人であり黒幕である。投資会社イースタン・プロミスの代表グレースの弟である彼は姉のおかげで何不自由ない生活をしている道楽者。しかも姉が手を焼くほどの薬物中毒でもある。韓国で瞬間最高視聴率51.4%を記録したドラマ『笑ってトンへ』(2010年)で明るく爽やかな主人公を演じ、“アジアの貴公子”と呼ばれた彼がこういうクズを演じるのもまた時代なのかもしれない。彼らが不正や暴力を振るい、女性たちを従属させてきた「古い価値観」の象徴のようでもあるからだ。

 そう、クズ男たちに人生を狂わされたスヨンの復讐は、長い間社会で抑圧されてきた女性が自らの手で運命を切り開き、人生の主導権を取り戻そうとする報復と自立のようにも読み取れるのだ。

 そんなスヨンと適度な距離感を保って共に行動するユンソン。裏ではスヨンの命を狙う男たちに逐一報告を入れるなど敵か味方かわからない彼女の行動の鍵を握るのがスヨンの亡き恋人ソギョンが残した教えだ。

「10回に9回は本当のことを言え。1回は裏切る為に嘘をつけ」

 男たちに監視されたスヨンと男たちに監視を命じられたユンソン。二人が権謀術数渦巻く闇の世界を突き進んでいく。復讐の先に何があるのか。それはしあわせなのか。報復を遂げ、大金とマンションを手に入れたスヨンの表情にあなたは何を感じるだろうか。

(文・青葉薫)

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