エルファバとの出会いで変わり始めるグリンダの価値観

『ウィキッド ふたりの魔女』
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 さて、この映画はそれなりに長尺なので、スケジュールに余裕があるときに観ることをお勧めする。映像が美しく、登場人物の心情の変化が丁寧に描かれるだけに、後の予定を気にしながら2時間41分をすごすのはもったいない。

 乗り物酔いしやすい人も、あらかじめ心の準備をしておくとよさそうだ。本作では、生き物が飛ぶシーンや高いところから高速で移動する場面など、虚構と現実がないまぜになって迫ってくる。裏を返せば、それだけ没入感が高い。ややクラっとしながらも、素晴らしい景色にワクワクできる。

 虚構と現実といえば、後の善い魔女・グリンダの、人気者ゆえに人気を失うであろう選択ができず、つい周囲を気にしてしまう描写もいい。グリンダ(当初はガリンダ)は、物語の冒頭時点では、自分が“善”の立場であることを疑わない。そうした者特有の無神経さや遠慮のなさが鼻につき、エルファバとも折り合いが悪かった。

 また、人気を維持するためならば、かわいいおばかさんであることも辞さない。ところが、不遇な立場から自分で未来を掴み取っていくエルファバにふれ、少しずつ歩み寄るうちに、おぼろげながらも真に大切なものやオズの世界の現実に気づき、“善”の基準が揺らいでいく。

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