不穏な余韻を残すエルファバの選択

『ウィキッド ふたりの魔女』
© Universal Studios. All Rights Reserved.

 物語の終盤。エルファバは、虐げられた者たちのために、肌の色の変更とは異なる願いを口にする。それにより、彼女とグリンダは、皆にあがめられる国王“オズの魔法使い”の秘密を知ることとなった。結果、エルファバは自分を認めてくれたはずの師・モリブルに裏切られ、悪と決めつけられながら出奔する。グリンダは、真実を知りながらも、エルファバについていく選択まではできなかった。

 その場に残ったグリンダは、これまで見向きもされてこなかったモリブルにいたわられる。おそらくこのあと、グリンダは“善”に仕立て上げられていくのだろう。エルファバが去った後の一見静かなシーンだが、その不穏さは本作きってものだった。

 一方で、一連のラストにはたしかな希望も感じられた。思い描いていた未来を捨て、その場を逃れることを決めたエルファバの姿は力強く、悲しみを内包しつつもかつての弱さはすっかり鳴りを潜めていた。この後も、エルファバとグリンダはそれぞれの立場から守るべきものに手を伸ばし、成長していくのだろう。いやがうえにも続編への期待が高まった。

(文・近藤仁美)

【作品概要】

『ウィキッド ふたりの魔女』
出演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジ with ミシェル・ヨー and ジェフ・ゴールドブラム
監督:ジョン・M・チュウ(『クレイジー・リッチ!』『イン・ザ・ハイツ』)
製作:マーク・プラット(『ラ・ラ・ランド』『リトル・マーメイド』)、デイヴィッド・ストーン(「ウィキッド」)
脚本:ウィニー・ホルツマン
原作:ミュージカル劇「ウィキッド」/作詞・作曲:スティーヴン・シュワルツ、脚本:ウィニー・ホルツマン
© Universal Studios. All Rights Reserved.
配給:東宝東和
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