映画『早乙女カナコの場合は』評価&考察レビュー。不器用な恋愛模様なのに。清々しいラストシーンに込められたメッセージとは?

text by ばやし

橋本愛が主演を務める映画『乙女カナコの場合は』が公開中だ。本作は、編集者になる夢を追うカナコと、恋人の⻑津田、それぞれが抱える葛藤、迷い、そして2人の恋の行方を描く、恋愛奮闘記だ。今回は見どころに迫るレビューをお届けする。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:ばやし】

ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。

矢崎仁司の個性が刻印された映像

映画『早乙女カナコの場合は』
©2015 柚木麻子/祥伝社 ©2024「早乙女カナコの場合は」製作委員会

 登場人物全員に人間味があって、どこか不器用。みんな前に向かって歩いているのに、足取りはどうにもおぼつかない。にもかかわらず、彼らを叱咤激励するどころか、自分事のように思えてしまう瞬間がいくつもあった。

 昨年、公開された映画『私にふさわしいホテル』(2024)に続いて、柚木麻子作品の映像化となった映画『早乙女カナコの場合は』は、2012年に発売された小説『早稲女、女、男』が題材となっている。

 ただ、矢崎仁司監督がメガホンをとった映画では「早稲田大学」などの固有の大学は登場せず。本作では大学入学とともに出会ったふたりの男女の付かず離れずの恋愛模様と、彼らを取り巻く人々の群像劇がメインに描かれていた。

 矢崎組として知られる脚本家の朝西真砂や、音楽を担当する田中拓人など、お馴染みのメンバーで制作されたこともあり、光景の積み重ねで時間の流れや感情の変化を表現する矢崎監督のこだわりが、映像から色濃く感じられる作品に仕上がっている。

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