英国インディペンデント映画賞で11部門ノミネート、映画『FEMME フェム』美しくも破壊的な心情を映し出した場面写真公開

text by 編集部

ネイサン・スチュワート=ジャレットとジョージ・マッケイW主演で贈る、心揺さぶるラブ・サスペンス『FEMME フェム』が、3月28日(金)より新宿シネマカリテほか全国公開される。日本公開を記念して、本作のメガホンをとったサム・H・フリーマンとン・チュンピンからコメントが寄せられた。(文・編集部)

「現実に生きるキャラクターたちの葛藤と生存の物語を描きたかった」

映画『FEMME フェム』
© British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022

 本作は、映画『キャンディマン』(2021)のネイサン・スチュワート=ジャレットが主演を務め、ジョージ・マッケイが出演しており、差別的な動機による暴力で心身に深い傷を負ったドラァグパフォーマーが、自らを襲撃した男と危うい駆け引きの渦に引き込まれていく姿を描を描いた作品だ。

【写真】美しくも破壊的な心情に心が揺さぶられる…貴重な未公開カットはこちら。映画『FEMME フェム』劇中カット
 
 本作のメガホンを取ったサム・H・フリーマンとン・チュンピンがコメントを寄せた。
 

【監督コメント(全文)】

『FEMME フェム』の発端となったのは、ネオノワール・スリラーというジャンルに根付く「ハイパー・マスキュリニティ(過剰な男らしさ)」の概念を覆したいという思いから始まった。私たちはこのジャンルを愛しているが、そこにクィアな視点が欠落していることを以前から感じていた。そこで、リベンジ・スリラーの中心にクィアの主人公を据えることで、新たな価値観を提示できると考えた。

 しかし、制作が進むにつれ、本作は単なる復讐劇にとどまらず、セクシュアリティ、マスキュリニティ(男らしさ)、家父長制、アイデンティティといったテーマを深く掘り下げる物語へと発展していった。私たち自身の経験や恐怖、怒りを見つめ直すことで、よりリアルで観客に共鳴する物語が形作られたのだ。

 最終的に、この映画は「ドラァグ」そのものについての物語だと確信した。ジュールズが纏うフェミニンな「ドラァグ」はもちろん、本作に登場するすべてのキャラクターが何らかの「ドラァグ」を纏い、それを通じて自らの力や社会的地位を築いていることに気づいたからだ。本作は、その仮面が剥がれたときに生じる変化を描いている。

 また、映画の道徳的な枠組みに縛られることなく、善人が正しい道を歩み、悪人が報いを受ける──そんな単純な構造ではない、現実に生きるキャラクターたちの葛藤と生存の物語を描きたかった。この映画を作ることは、私たち自身にとってもエキサイティングで、カタルシスをもたらす経験となった。観客の皆さんにも、ぜひこの旅に加わってもらいたい。

【ストーリー】

ヘイトクライムの標的にされたドラァグクイーンのジュールズは、自分を襲ったグループの一人プレストンとゲイサウナで顔を合わせる。性的指向をひた隠しにしているプレストンに復讐するチャンスを得たジュールズは、巧みに彼に接近していくが、徐々に説明のつかない感情が芽生え始める。待ち受けるのは復讐か、それとも──。

【作品情報】

監督・脚本:サム・H・フリーマン、ン・チュンピン
製作:ヘイリー・ウィリアムズ&ディミトリス・ビルビリス
撮影:ジェームズ・ローズ
編集:セリーナ・マッカーサー
出演:ネイサン・スチュワート=ジャレット、ジョージ・マッケイ、アーロン・ヘファーナン、ジョン・マクリー、アシャ・リード
2023年/イギリス/英語/98分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:FEMME/字幕翻訳:平井かおり/映倫R18+/配給:クロックワークス
© British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022
公式サイト

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【了】

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