セックスと死をめぐる残酷な祝祭劇

© 2024 CG Cinéma / Scala Films / Arte France Cinéma / Andergraun Films / Rosa Filmes
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 映画『ミゼリコルディア』は、1台の車の到着で幕を開け、墓への埋葬で物語が始まり、そしてまた、夜の墓地で物語を閉じる。埋葬があり、死体遺棄があり、季節外れのキノコ収穫があり、かくのごとく欲望の蓋があられもなく開いてしまった以上、あとは欲望のおもむくまま進んでみるしかない。この映画では誰が幸福を摑んでいるのだろうか。妄執にからめとられ、誰もが不幸に陥ったと言えるし、みずから進んで外道へと逸脱していく人たちであるという点では、誰もが幸福なのだと言える。

 クフ王のピラミッドを見よ。始皇帝の兵馬俑を見よ。仁徳天皇の前方後円墳を見よ。優れた古代文明はすべて墓とともに始まったのである。人類史は墓で始まり、おそらく墓で終わる。アラン・ギロディはアルカイックな美意識をもって映画を作り続けている。フランス南西部の田舎で展開されるこの悲劇を見るにつけ、いや、これは悲劇ではない、これはセックスと死をめぐる運命論的かつ残酷な祝祭劇として見られるべきだと考えるべきだろう。ジェレミーというパンセクシュアルの青年はこのアルカイックな祝祭劇の巫女である。

(文・荻野洋一)

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【了】

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