映画『Flow』は何がスゴい? アニメのプロが解説。宮崎駿『君たちはどう生きるか』との共通点とは? 評価&考察レビュー

text by 諏訪道彦

2024年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にてワールドプレミア上映され、アヌシ―国際アニメーション映画祭で4冠を受賞したラトビアのクリエイター、ギンツ・ジルバロディス監督の長編アニメ映画『Flow』が公開中だ。今回は本作のレビューをお届けする。(文・諏訪道彦)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:諏訪道彦】

1959年愛知県生まれ。「シティーハンター」「名探偵コナン」「犬夜叉」など企画・プロデュース。劇場版「名探偵コナン」シリーズは23作目「根性の拳」まで企画・プロデュース。2023年10月「株式会社アスハPP」設立。現在は引き続き新作アニメーションの企画プロデュース業を行う。現在大阪芸術大学芸術計画学科教授。

言葉を話さない動物たちの壮大なストーリー

映画『Flow』
©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

 2025年アカデミー賞で長編アニメーション賞受賞という作品「Flow」。アニメーション関係者なら観るべきと思い、土曜日の渋谷で鑑賞してきました。客席の入りは16時上映回で6、7割。もう少し入っていても良いかも、と思いながらも、入り口には主人公の黒猫の大きなバルーンが展示されて、西陽を背にしてアカデミー賞受賞の大きさを誇っていました。

 ボクは可能な限り、事前に何も情報を入れずに映画を鑑賞したいと思っています。今回も「アカデミー賞受賞」情報と、ポスタービジュアル以外何も知らずにスクリーンに望みました。なので冒頭の黒猫と野犬とのバトル(というか一方的な追いかけと逃げ、そのスピード感にまず驚く)なんて観ちゃうと、「ああ、これはワイルドな世界の生存を賭けた物語か」と早合点してしまいました。でもこの事も含めて壮大なストーリーの幕開けになるとは思ってもいませんでした。

 とにかくこの作品に人間は出てこない。でも人間が存在した、というか繁栄していた世界であることはスクリーンからしっかりと伝わってきます。その上で想像を超えた展開に対応していく、言葉を話さない動物たちの動きがメインとなってます。
 
 人間もいないし言葉を話さない、ということはセリフが無い。すべては登場する動物キャラクターの意思疎通です。そしてはっきりその意思が感じられます、生き抜いていこうという意思が。天敵を超えたお互いの存在を認め合っていくことで紡がれる、優れたサバイバルストーリーとでも言いましょうか。

 この作品、鑑賞してから覗いた公式サイトによると『全編がオープンソースソフトウェアBlenderで制作され、スタッフは50人以下、制作費は350万ユーロ(約5.5億円)という、アニメーション制作の常識を覆す極めてインディペンデントな体制と革新性の作品』だそうです。

 予算が数百億円と言われる海外アニメーション映画制作において、これは画期的なコトですが、最近日本アカデミー賞でも似たようなこと(『侍タイムトリッパー』(2024)の作品賞受賞)がありました。

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