映像世界へ没入させるリアルなサウンド

映画『Flow』
©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

 それはともかく、アニメーションの命というべき作画の話です。主人公たち動物キャラクター表現ですが、シロウト目にもあえて解像度の低い輪郭となってます。それに対比して走り抜ける森や草木、そしてこっちも主役でしょう、という水の表現が繊細で秀逸。スピード、というアニメ得意の動きも含めて、どこを作って何を魅せようか、全編にわたってそれがブレていない。

 映像だけでなく音響もいちいち脳髄に入ってきます。それはまず動物の声。鳴き声や足音、ジャンプする仕草に対しての音、そしてたとえば爪を立てて壁を上る音。さらにさまざまな状況効果音。リアルだし、そのリアルが観る者をさらに、映像世界へ没入させてくれる。

 観てていちばん感心して疑問に思ったのがシナリオです。アニメーション制作において企画 シナリオ→絵コンテ→作画、という道順は必須だと思うので、黒猫たちがいつどこで何に遭遇しどう動くのか。これを緻密に重ねていかないとこうはならない。それは本当に膨大な作業です。

「Flow」というタイトルは多義的です。びっくりするような出来事が流れるようにやってくる、という意味合いにも取れれば、黒猫を見舞う試練の連続を表現しているようにも思えます。逆に言うと、ピッタリ当てはまる解釈がないところが面白いと思います。筆者は、「Flow」というタイトルが、本作に緻密な印象をもたらしている上述したアニメーション制作の流れを表現しているように感じました。

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