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映画『別れる決心』は面白い? 忖度なしガチレビュー。殺人事件の被疑者と刑事のロマンスの行方は? 《あらすじ 考察 解説》

text by 柴田悠

『パラサイト 半地下の家族』をはじめ、近年注目度が高い韓国映画。今回新たに、世界中で注目を集める作品が登場した。数々の映画賞を受賞し国内外で高い評価を得ている映画『別れる決心』は、殺人事件の被疑者と刑事の熱愛を描くサスペンスロマンスだ。今回は、鬼才パク・チャヌク監督が「大人のための映画」と語る本作の魅力をひも解いていく。(文・柴田悠)

数々の映画賞を受賞した『別れる決心』
大人同士のプラトニックな愛の世界をエレガントに魅せる

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『オールド・ボーイ』(2003年)や『親切なクムジャさん』(2005年)、『お嬢さん』(2016年)など、鮮烈な映像表現で男女の愛憎を浮き彫りにする名匠パク・チャヌク。その6年ぶりとなる待望の新作が日本で公開されている。その名も『別れる決心』。殺人事件の被疑者と刑事との熱愛を描いたラブロマンスである。

主演は『殺人の追憶』や『グエムル〜漢江の怪物』など、ポン・ジュノ監督作品への出演で注目を集めたパク・ヘイルと、『ラスト、コーション』でヒロインを演じたタン・ウェイで、脚本はNetflixシリーズ『シスターズ』が話題となったチョン・ソギョン。

本作は公開当初から絶賛され、“韓国のアカデミー賞”とも称される青龍賞では監督賞をはじめ6冠を達成。さらに2022年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門では監督賞を受賞し、アカデミー賞国際長編映画賞部門韓国代表に選出されるなど、国内外で高い評価を受けている。

あらすじはこうだ。ある男が山頂から転落死する事件が発生。生真面目な刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、事件の捜査を任されることになる。取り調べを進めるうちに、被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)に疑念を抱き始めるが、ヘジュンは謎めいたソレに惹かれ、またソレもへジュンに特別な感情を抱き始めていた。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えたが、その後第二の事件が発生。2人は愛と疑念が渦巻く混沌へ巻き込まれていく―。

これまで鮮烈な暴力描写やセックス描写で知られてきたチャヌクだが、本作ではそのほとんどを封印。へジュンとソレの駆け引きを主体とした大人同士のプラトニックな愛の世界をエレガントに描出している。

しかし、チャヌクならではの「官能性」がないかといえば、決してそんなことはない。例えば取調べのシーンでは、部屋中に鏡やモニターが設置され、見ている側が実像なのか虚像なのか分からなくなっていくような仕掛けがほどこされていたり、作品の随所にチャヌクが敬愛するアルフレッド・ヒッチコックの『めまい』(1958年)を感じさせるような演出が散りばめられている。妄想と現実、男と女―。これらの輪郭線が溶け、シームレスになる。そこで表現されるのは、肉体関係を超えた「究極の愛」なのかもしれない。

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