映画×バレエからみえるダイバーシティ

© Joika NZ Limited / Madants Sp. z o.o. 2023 ALL RIGHTS RESERVED.
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 2024年の11月に公開した映画『ネネ -エトワールに憧れて-』は黒人の少女が主人公で、境遇、差別、嫉妬に打ち勝ち、オペラ座の最高位を目指すストーリーだ。パリのオペラ座バレエ学校に入学でき喜ぶネネだったが、彼女を待ち受けていたのは実力があるにもかかわらず肌が黒いという理由だけで差別をする一部の教師や、同級生たちからの執拗ないじめだった。

 それでもひたむきに頑張るネネにふりかかる数多くの理不尽な出来事には、実際にこのような差別があると思いたくない内容ばかり。だが、ベルリン国立バレエ団に所属する唯一の黒人バレリーナであったクロエ・ロペス・ゴメスは、「白鳥の湖」のために白粉を使って肌を白くするよう指示されたという。屈辱的であったが、解雇を恐れて反論できず、肌に白粉を塗った彼女に気持ちを考えると心が締め付けられる。

 同じく 2024年にデジタルリマスター版が公開となった『リトル・ダンサー』(2000)では、主人公のビリーは炭鉱町の出身。それゆえ“男らしさ”を強要され、上流階級の女の子たちの習い事であったバレエを習うなど父親からしたらありえないことだった。階級や性別など様々な理由で夢を閉ざされそうになるビリーだが、その夢の灯を消す権利は誰にもないことを、映画を通して再認識できる内容となっている。

 セクハラや性虐待の被害者が実体験を告白または共有する運動である#MeToo運動では、ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)の芸術監督だったピーター・マーティンスが、ダンサーへの虐待やセクハラの告発を受け、辞任したり、パリ・オペラ座バレエのダンサーたちが、劇場の内部文化におけるハラスメントや不平等な労働環境について声を上げたりと、盛んにハラスメントに対して声を上げる活動が行われた。これらの活動により、業界内での意識改革が進んだとされている。文化の鏡である映画がこのような許されざる現実を映像で訴えかけることは、非常に重要な機会であることが分かる。

【作品概要】

タリア・ライダー ダイアン・クルーガー オレグ・イヴェンコ
監督・脚本:ジェームス・ネイピア・ロバートソン
2023/イギリス・ニュージーランド/111 分/カラー/スコープ/5.1ch/原題:JOIKA/日本語字幕:古田由紀子/字幕監修:森菜穂美/配給:ショウゲート
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【了】

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