「“正義VS正義”の対立構造を描きたかった」映画『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』リュ・スンワン監督、単独インタビュー
2015年に韓国で大ヒットを記録したアクション映画『ベテラン』シリーズの第2作『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』が4月11日(金)より絶賛公開中。今回は、前作に続いてメガホンを取ったリュ・スンワン監督にインタビューを敢行。本作で描いたテーマや、細部の演出やたっぷりとお聞きした。(文・ZAKKY)
——————————
プレッシャーの中で描いたテーマ
ーーーまず冒頭のシーンが、かなりコミカルですね。BGMにシティポップ風の音楽が使用されており、「今回も軽快なトーンの作品なのかな」と思いました。しかし、途中から一転してシリアスな展開になり、引き込まれていきました。
「前作『ベテラン』(2015)が韓国で予想をはるかに超える記録的な成功を収めたので、続編には大きなプレッシャーがありました。そして、本作で描きたかったテーマは、前作よりも遥かに重いものでした。ファンが前作に対して持っている記憶は、軽快でスムーズな作品といった印象だと思うんですね。なので、本作でそのギャップをどう調整するのかが、私にとって大きな課題でした」
ーーーなるほど。
「だからこそ、冒頭では観客に、リラックスできる居心地のいい雰囲気を与えるために前作と同じような愉快で痛快なエピソードを用意したんです。その上で、本題に入っていきたいと考えました」
ーーー『法で裁けない悪を悪が制する』というテーマは、監督自身の願望が込められているのでしょうか?
「正義を振りかざす“欲望”がネット上で噴出しているのを見ると、怖くなります。そうしたことが蔓延る現状に警鐘を鳴らしたかったのです。ネット上では、いろんな人が“正義”という言葉を使って、誰かを攻撃する光景が溢れています。客観的な正義など存在しない、多種多様な“私的な正義”があるだけです」
ーーー日本でも十分当てはまる話だと思います。
「SNSなどがネット上で溢れる今の時代、私たちは便利さと引き換えに“混乱”を手に入れたと思うのですね。その中で何が本当で何が嘘なのかを見極めるのは難しくなってきていると思います。自分が見て聞いたことを問い続けると、疲れてしまいます。でも、自らに問い続けるしかないと思います。そのような現在の世の中を表現したかったのです。
なので、普通のアクション映画のような“善と悪の対立”構図ではなく、“正義VS正義”の対立構造を描きたかったのです」
―――真犯人が誰かは序盤で大体、予想は着くのですが、その後の展開もスリリングでした。
「本作は、冒頭から真犯人・ヘチの顔をしっかりと映しているため、真犯人を推測すること自体は難しくありません。でも、私はもともと、どんでん返しのある作品を目指したわけではありませんでした。私が意図したのは、『この人にこそ処罰してほしい』と、観客に思わせることです。そのような痛快な流れを予想させておいて、“正義”を体現していると思っていたキャラクターが、実は“悪”かもしれないというジレンマに、早い段階で気付いてほしかったのです」