「柳楽優弥さんは期待以上の演技を出してくれました」『第1回日本モンゴル映画祭』アムラ・バルジンヤム、独占インタビュー

text by 加賀谷健

『第1回日本モンゴル映画祭』で上映された映画『ハーヴェスト・ムーン』(2022)にて脚本・監督・主演を務めたアムラ・バルジンヤムさんにインタビューを敢行。柳楽優弥さん主演のモンゴル映画『ターコイズの空の下で』(2021)では、出演の他にも脚本も務めている。今回は、柳楽さんとの共演やモンゴル映画についてお話を伺った。(取材・文:加賀谷健)

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【著者プロフィール:加賀谷健】

コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修

クラシック音楽を専門とする音楽プロダクションで、企画・プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメン研究」をテーマに、“イケメン・サーチャー”として、コラムを執筆。 女子SPA!「私的イケメン俳優を求めて」連載、リアルサウンド等に寄稿の他、CMやイベント、映画のクラシック音楽監修、解説番組出演、映像制作、 テレビドラマ脚本のプロットライターなど。

2025年から、アジア映画の配給と宣伝プロデュースを手がけている。
日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。

冬の時期は仕事を入れずハンティングする生活スタイル

アムラ・バルジンヤム。『第1回日本モンゴル映画祭』初日舞台挨拶にて
アムラ・バルジンヤム。『第1回日本モンゴル映画祭』初日舞台挨拶にて

ーー第1回日本モンゴル映画祭上映作品である『ハーヴェスト・ムーン』(2022)冒頭、山の上で試行錯誤して電話する場面が印象的です。アムラさん演じる主人公・トルガは都会のベンチでその電話を取り、草原と都会のコントラストがあざやかです。2021年に公開された柳楽優弥さん主演作で、同映画祭上映作品である『ターコイズの空の下で』でも同様な場面があります。山の上から携帯を使う行為はモンゴル映画では頻出する描き方なのでしょうか?

アムラ・バルジンヤム(以下、アムラ)「当時は広い国土の中でどこでも電波が繋がっている訳ではありませんでした。今は状況が変わっていますが、草原のような場所だとああいった工夫をしていました。『ハーヴェスト・ムーン』で描かれる通話場面で印象的な木材のタワーは今も使っています」

ーートルガが鎌で干し草を狩る場面では、羊の群れがせっかく刈り取ったものを食べてしまう様子が描かれます。これもまたモンゴルでは日常茶飯事的な風景なのかと思いながら見ていました。

アムラ「モンゴルの家畜は、必ずしも農場で飼育されている動物たちではないため、誰かが作業しているところに入ってきて作物を食べてしまいます。干し草だけではなく、野菜を食べてしまったりもします」

ーー『ターコイズの空の下で』冒頭も印象的でした。アムラさんと同名の役・アムラが積み上げられた丸太をひょいと飛び越え、厩近くの手すりをすっーと2回手をすべらせる動きがあります。アクションというわけではないけれど、ああいうダイナミックで静かな演技はどんなことを注意していますか?

アムラ「アムラというキャラクターは専門的に盗みを働く人です。警察が追いかけてくると、用心深い物腰で静かに、でも強く動く。役柄に合わせて細心の注意を払って演じました。映画を学んでいた学生時代に先生から『演技をするのではなく、事実を表現したいと思いながら演じてください』と教わりました。つまり、リアル。それが私の理念です。一方で、モンゴルで暮らす中でハンティングを楽しむ私自身の生活スタイルも役作りの一部になっています」

ーーモンゴルではどんな動物を狩るんですか?

アムラ「モンゴルの法律で許可されている猪や狼を狩っています。シーズンは冬です。秋から準備をして冬に狩りに行きます。なるべく冬は映画の撮影や仕事を入れないようにしています。伝統的なやり方として車ではなく馬で行き、自然の中で寝て、ハンティングしています。近代の人は変わってきているかもしれませんが、私たちの世代は小さい頃、夏休みに田舎に行ってよく馬に乗っていました」

ーー『ターコイズの空の下で』のアムラが、盗んだ馬で日本の街中を走る場面があります。高倉健さん主演映画『君よ憤怒の河を渉れ』(1976)で、馬が新宿を走る有名な場面を思い出しました。

アムラ「その映画は観ていませんが、日本の監督だと黒澤明監督の作品は大好きです。俳優だと柳楽優弥さんと反町隆史さんが大好きです!」

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