主演・監督・製作を兼任する先で考えるモンゴル映画ビジョン
ーーモンゴル映画祭上映作である『獄舎Z』(2024)というゾンビ映画の宣伝を担当している関係で伺いたいのが、モンゴリアン・ゾンビ映画の歴史についてです。
アムラ「モンゴルでは10年前に一度、ゾンビ映画がジャンルとして試されたことがありますが、実際に海外の市場に入るアメリカ映画のような作りの映画は『獄舎Z』からです。モンゴルには、ゴビ砂漠など、ゾンビが現れる土台や材料がたくさんある。だから今後海外向けの国際的なゾンビ映画ができるといいなと思います。
モンゴルをロケ地にしている韓国ドラマも多いです。広すぎることや天候が変わりやすいことがロケ地としての難しさではありますが、それさえクリアできたらまだ使用されていないいいロケ地がたくさんあります。TBSドラマ『VIVANT』(2023)がモンゴルでロケをしましたね」
ーー『獄舎Z』では、『VIVANT』ドラム役で話題になった富栄ドラムさんにコメントをもらいました。
アムラ「『VIVANT』で主役を務めた堺雅人さんがモンゴルでCM撮影をしなければならず、現地のコーディネーターとして働きました。私の制作会社では、キャスティングやロケ地選択で共同プロダクションとして参加することがあります。
その上でプロダクションとしては世界の映画基準に照準を合わせ、国際映画祭に出品できる作品を作りたいです。アートハウスやインディペンデント映画ではなく、コマーシャルを目指した作品。日本で共同作品を出していきたいです。ゾンビでもいいです(笑)」
ーーこれまでモンゴル映画というと大草原の風景などをイメージしてきましたが、今回の映画祭で新しいモンゴル映画像が打ち出されました。モンゴル映画界を牽引するアムラさんはどのようにモンゴル映画を海外に伝えていきたいのか。そのビジョンを教えてください。
アムラ「モンゴル映画業界の歴史でいうと今、90年目です。90年のうちの60年間は社会主義で、ほとんどがプロパガンダ映画でした。本当の意味で現代の映画業界の始まったのは、2010年からです。ここからモンゴル映画を国際的に紹介してきたいです。
2014年に配信された『マルコ・ポーロ』でモンゴル人俳優として初めてNetflix作品に出演できたことに誇りを持っています。世界に出たいと希望を持っている人はたくさんいます。でもそのチャンスが少ない。モンゴルの状況として、メイクアップなど他の分野の学校はありますが、監督やプロデューサーを育成する学校がまだあまりないです。土台を作れるように学校も作りたいです。日本とモンゴルは相撲などのスポーツでも接点はありますが、映画でも接点を持てたらなと思います。私は、その架け橋になりたい。私たちの映画制作に支援いただいている日本の皆さんに感謝しています。どうもありがとうございます。愛してる!」
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