チャーミングな人間賛歌

映画『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』
©2025Universal Pictures

 また、「ブリジット」シリーズだけあって、新たに登場するキャラクターも魅力的だ。アプリで繋がった29歳のロクスター(レオ・ウッドール)、我が子の教師であるウォーラカー(キウェテル・イジョフォー)など、魅力的な男性陣が脇を固めている。

 かと思えば、主人公が華やかなママ友や完璧なベビーシッター気後れし、つい悪態をついたり、我が身を顧みたりする場面もある。この年齢の女性だからこそのコンプレックスや老いの表現は、軽快なブリジット節に織り込まれながらも、物語に深みを与えている。

 なお、少し残念だった部分をいえば、ダニエルを除く男性陣の葛藤がやや薄味だったことだろうか。ストーリー全体からすれば枝葉なのだが、生身の他人同士であるからこそのいかんともしがたいアレコレを、個人的にはもう少々追いたかった。

 いずれにしても、本作はチャーミングな人間賛歌である。「サイテー」「懲りない」という表現の裏には、「それでこそ人」というポジティブな実感がある。失った時間や故人を取り戻すことはできないが、それらはたしかに存在し、いまを生きる私たちのなかに息づいている。身につまされながらしっかり笑えて、観れば明日がちょっと楽しみになる。『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』は、そんな佳作である。

(文・近藤仁美)

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