青年ルイによるミソジニーへの危険な接近

映画『けものがいる』
©Carole Bethuel

インセル

『けものがいる』は3つの時代でくり返し出会う女性と男性、ガブリエルとルイ(ジョージ・マッケイ)のメロドラマである。元々はボネロの『SAINT LAURENT/サンローラン』(2014)で主人公イヴ・サン=ローランを演じたギャスパー・ウリエルがルイ役を演じる予定だったが、ウリエルが2022年1月にスキー事故に遭って37歳で急逝したため、代役として『1917 命をかけた伝令』(2019/サム・メンデス監督)での熱演が高く評価されていたジョージ・マッケイに白羽の矢が立った。

 ガブリエルとルイの愛は成就を見ない。すれ違いのメロドラマなのである。2014年、ロサンジェルス在住の大学生ルイは、インセルになっており、自分を愛する女性は現れないと決めつけ、ミソジニスト的なショート動画をSNSで配信している。『けものがいる』の3つの時代はデイヴィッド・リンチ、ミヒャエル・ハネケ、デイヴィッド・クローネンバーグのテイストがないまぜとなっているが、2014年のインセル青年ルイはかぎりなく『ツイン・ピークス』(1990-91)のミソジニーに接近する。

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