「2025年アート映画界最強俳優」の異名を持つ俳優チョウ・ヨウとは…? 中国最も熱い視線を注がれる理由を徹底解明
カンヌ、ベルリン、ヴェネチアー世界三大映画祭の常連である中国の名匠ジャ・ジャンクー監督の最新作『新世紀ロマンティクス』。5月9日(金)の公開に先駆け、本作に出演する中国の注目俳優チョウ・ヨウの本編切り抜き映像が到着。「2025年アート映画界最強俳優」と呼ばれる男チョウ・ヨウの魅力を解明する。(文・編集部)
中国で熱い視線を送られる実力派俳優
中国国内の人気ドラマへの出演が続くチョウ・ヨウ。出演作の1つ、『バビロンの恋人』(2021)は、主人公が小学校時代に日記に書きつけた空想物語が12年の歳月を経て現実になってしまうという物語だ。空想の内容が不適切だという理由で、主人公は教師に小学校の同級生たちの前で日記を読み上げさせられてしまう。その際に主人公を馬鹿にした同級生・段水流(ドアン・シュイリュウ)役をチョウ・ヨウが演じている。
教室で話を聞いた時はからかったくせに、実はその空想物語に出てくる女神に密かに恋してしまっていたというコミカルな役どころだが、「最初は笑えていたのに、女神と段水流の愛の行方に最後は号泣してしまった」「どうすれば私はこの2人みたいな恋を現実で見つけられるの!?」と視聴者からは熱い反応が相次いだ模様だ。
また、2024年OAの人気TVドラマ『日光之城』では、チベット族一家の長男・索朗を熱演。妻亡き後3人の子どもを育てた父に黙って起業し、チベットの特産物を中国全土に広めるという夢を追いかける役柄だが、親世代への愛と、愛ゆえの反発という相反する感情を持った青年を見事に演じ切ったとして高い評価を得た。
「彼の話すチベット方言はリアルなアクセントだ」「本当にチベットに住む1人の普通の青年に見える」「チベット族の人だと思っていた!」等の視聴者からの反響があったように、その徹底的な役作りには目を見張るものがある。
そんな実力派との呼び声高いチョウ・ヨウが『新世紀ロマンティクス』で、満を持して日本のスクリーンに初登場する。(映画祭での出演作上映を除く)
チョウ・ヨウが「2025年アート映画界最強俳優」と呼ばれるワケ
“Girls on Wire”(25/ヴィヴィアン・チュイ監督)が第75回ベルリン国際映画祭(2024年2月15日~25日開催)コンペティション部門に選出、大阪アジアン映画祭でも上映された出演作「バウンド・イン・ヘブン」(24/フオ・シン監督)が第49回トロント国際映画祭(2024年9月5日~15日開催)センターピース部門に、そして本作も第77回カンヌ国際映画祭(2024年5月14日~25日開催)コンペティション部門に選出され、レッドカーペットを歩いた。
その3本の出品により、2024年の間に世界の主要映画祭に出演作品が最も多く出品された中国語圏の俳優となった。その引きの強さ、作品選択眼などから、現在「2025年アート映画界最強俳優」と呼ばれるように。
チョウ・ヨウが中国で愛される理由
ドラマデビュー作『会痛的17岁』(2015)や『非正常事件集』(2017)や林遣都や黒木メイサも出演した映画『青禾男高』(2017)など、若い世代が自分事として受け止めたドラマの出演が続いたことで、「自分たちの代弁者」的な立ち位置を確立した。
また、インタビューで「有名になりたいのではなく、演じた役柄を覚えてもらえたら」と答えるなど、真面目さが垣間見え、その演技に対する取り組み方、飾らない謙虚な人柄が支持されている理由の1つ。そのため、いわゆるスター俳優という立ち位置ではなく、若い世代の間で‟間違いない俳優“として絶大な人気を誇る。
また、パリファッションウィークにバレンシアガからの招待で出席するなど、ハイブランドからのラブコールを得るファッショニスタとしても注目を集めている。
映画『新世紀ロマンティクス』での出演シーン
チョウ・ヨウの本作での出演は終盤の1シーンのみだが、非常に強い印象を残している。新型コロナウイルス感染症の流行により、勤めていた会社の経営が傾いたビン。仕事を探して重慶からマカオに隣接する経済特区・珠海(チューハイ)を訪れた彼を出迎えるのが、チョウ・ヨウ演じるSNSインフルエンサーのマネージャー、チョウだ。
いいビジネスはないかとビンに問われ、「今はどこでも難しい」と笑みを浮かべるチョウ。インフルエンサーのマネジメントで利益を生み出す仕組みを丁寧にビンに説明しておきながら、いざ「何か俺にできることはあるか?」と言われると困り顔で固まってしまう表情豊かな男を見事に演じ切っている。昇竜の勢いで活躍の幅を広げている再注目俳優、チョウ・ヨウから今後も目が離せない。
【『新世紀ロマンティクス』あらすじ】
新世紀を迎えた2001年。百万人以上の故郷が湖に沈んだ2006年。目覚ましい経済発展を遂げた2022年……。チャオはを出て戻らぬ恋人ビンを探してへ、ビンは仕事を求めて経済特区・を訪れる。時は流れ、ふたりはまた大同へ――。閑散としていた街にビルが立ち並び、AIロボットはスーパーで接客をする。変貌し続ける街に飲み込まれながら、繰り返す出会いと別れ。時間は戻らない。だから、前へと進む。
【作品情報】
監督:ジャ・ジャンクー 脚本:ジャ・ジャンクー、ワン・ジアファン
撮影:ユー・リクウァイ、エリック・ゴーティエ 音楽:リン・チャン
出演:チャオ・タオ、リー・チュウビン
パン・ジアンリン、ラン・チョウ、チョウ・ヨウ、レン・クー、マオ・タオ
2024/中国/中国語/1:1.85/111分/G 风流一代 Caught by the Tides
© 2024 X stream Pictures All rights reserved
配給:ビターズ・エンド
公式サイト
公式X